山本

2020年7月31日 金曜日

未来のための土木工事

高田造園ブログをご覧のみなさま、こんにちは。スタッフの山本です。なかなか明けない長梅雨ですが、いかがお過ごしでしょうか。
中には豪雨被害にあわれた方もいらっしゃるかと思います。この場をお借りして、お見舞い申し上げます。

さて、僕は現在高田造園に身を置かせてもらっている立場にありながら、親方に無理を言って、自宅の裏山の崩落した崖の修復工事を請け負い、週3日くらいのペースでやらせてもらっています。
ですので、まだ工事途中ではありますが今回はそのことについて書いていこうと思います。

まずは崩壊した崖のことを少し。
ここは平野に張り出した山の尾根筋にあたる場所で、この集落の墓地になっています。昨年の千葉の台風被害にあい、大きく崖崩れしました。
僕はここに越してきてまだ2年くらいなので、原因を探ってみようと、近所の人に聞いてみると、この墓地はもともと多種の樹木が生い茂る墓地だったそうです。
ところが、十数年前にうっそうとして暗い、蚊が多い、などの理由から、すべて切ったということでした。(大木もあったそうですが)
高田造園で様々なことを学んでいると、木の根っこで支えられている斜面なんだから、皆伐したらそりゃあ崩れるのは当たり前の事でしょ。。となるのですが、現に日本のいたる所で、おきていることだと思います。
このような崩壊、一見すれば恐ろしいのですが、別の見方をすると、自然自身が土中の通気浸透水脈環境を正常に戻そうとして、安定に向かうために、つまりを解消しようとする働きでもあるんです。
ですので、この後どうするかが鍵となります。
この崩壊後、行政の施したのはtバッグとかフレコンバッグと呼ばれるもの積む仮工事でした。
昨年の台風後、千葉県ではそこら中で見られるあれです。復旧は迅速な対応が必要ですので、これはこれで大切なのかもしれません。ですが、これにより土地にどんな影響があるのか。後ほど書きます。

なんで、それを僕がやらせてもらうことになったのか。
この土地は地域の人たちの所有で、行政の方では予算が出ず、墓場なので檀家の方々でお金を出し合って直すということになっていました。
僕が知ったころにはすでに一社見積もりをかけている段階でした。もちろん普通の土木会社です。
それを聞いた途端、居ても立っても居られなくなり、ちょうどその頃発行された地球守読本を片手に代表の人のところへ持っていきました。そして、こんなやり方もあるんです。と説明しました。
そんなやり取りやアドバイスを何度かしているうちに、「この工事、やってもらえないかな?」ということで今にいたります。
もちろんまだまだ経験は浅いし、実績もまるでありませんが、自分の家の裏山は絶対に守りたいという想いと、日本中でおきている同じような状況の道しるべになればと思い(生意気ですが)この仕事をやる事を決めました。
信用してくださった地域の方々にも、無理いったことを快諾してくださった親方にも本当に感謝しています。


前置きが長くなりました。工事をレポートしていきます。

崖崩れした斜面です。お墓はギリギリのところで落ちずにとどまっていました。

大きく谷になっていた部分がありました。墓地の使用の便宜上、道を通してほしいとの要望もあり、盛土をしなければいけないのですが、ここの谷部と、もう一本の谷はしっかりと残していきます。
土地は呼吸したくて崩したはずなので谷は潰さず、むしろ大きく呼吸するような造作をしていきます。

谷部にスコップで大穴を掘りました。水と空気の流れを意識します。ですが排水とは考えません。浸み込ませます。

そこに竹炭、竹、枝葉などの有機物をさしていきます。泥水が流れ込まないよう、しがらみもやりました。

上から見たところ。炭をさらにいれます。

最後に落ち葉でマルチング。

落ち葉掃除しているのではなく、これも立派な資材集めです。山には資材が溢れています。

丸太杭を焼いて炭化させます。耐久性アップだけでなく菌糸と樹木根の誘導がねらいです。

敷き葉工法です。盛土は層状になっています。サンドイッチしていくことで土圧もかかりにくくなります。
いきなり盛土していってるところの写真になってしまいました(汗)撮り忘れましたが、盛土の前の下地処理もかかせません。雨水が浸透するように、です。


写真では分かりにくいですが、斜面になっているところにそのまま土を盛ることはしません。必ず斜面側は垂直に落とし、盛る面も水平に整えます。
杉や檜の丸太も運よく手に入りました。


谷部の所は土を入れず、グリと藁で上げていきました。グリも買ったのではなくコンクリートの解体材をもらってきました。藁は農家さんからの頂き物です。ありがたや。


古瓦とグリの層をつくります。盛土10センチくらいごとに敷き葉の層と交互にやっていきました。

最初の説明で少し触れました、tバッグによる仮工事の影響とは、水と空気のせき止めること、通気浸透水脈の分断による、施工場所上部の土のグライ化でした。施工後半年ほどしかたっていませんが粘土質なので、よりグライ化が速かったのかも知れません。
ドブの様な臭い、青みがかったグレー色、小さな生物すら見られず、極めつけは、分解の速そうな雑草すら、土の中にそのまま残っているという状態でした。
なので縦方向の水と空気の動きをつくりたくて、こんなことをやってみました。オリジナルですので、効果のほどは分かりませんが、、。長さ1メートルくらいの竹(ちょっと古くて割れてるようなの)を打ち込んでいます。

けっこう進みました。

目標の高さまで見えてきました。
盛土工事が終われば、ところどころに植樹していきます。もう少し工事は続きますがとりあえずここまでです。興味のある方、手伝いに来てください(笑)

このような土木工事の方法は全くと言っていいほど一般的には広まっていません。この集落にも土木関係の人がいて、「常識的におかしいだろ」、「こんなんで大丈夫なのか」というような厳しい意見も言われます。
でも、今現在のその常識ってなんなんでしょう?その土地を、安定させるのが目的の土木工事で、その答えが出るのは何年も後のことです。さらに言えば答えを出すのは自然側であって、人間の脳みそではないと思うのです。
一昔前の非常識が、今の常識になっている事、逆もしかりですが、山ほどあります。
なので、しっかりとやり切って、結果を出して、この工事が僅かでも今後の道しるべになれば本望です。何年後かの未来にこのような土木工事が常識となる世の中になればと願います。



これから梅雨も明け一層暑さの厳しい季節になります。体調にお気をつけてお過ごしください。では。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

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