お知らせ

2015年9月18日 金曜日

夏の収穫

高田造園ブログをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。ご無沙汰しております石井です。


前回の更新から随分日にちが空いてしまいました。本日は、酷暑を思い出させてしまう真夏の時期にまで遡ってしまうことになりますが、前回の更新の直後頂きましたお盆の連休の「造園的収穫」について書き連ねたいと思います。


まずはお盆休み序盤、八月八日に、雑誌「庭」主催のシンポジウムに参加しました。本誌をお読みの方はご存知と思いますが、読者と掲載された庭師、そして異業種の方の交流を目的としたシンポジウムが2015年春号から発刊のタイミングで定期的に開催されており、今回行われるのは三回目となります。初回に池袋で行われたシンポジウムに参加しレポートとしてまとめた原稿を2015年夏号に掲載させていただいたご縁もあったため、関東近辺で行われた場合には出来得る限り参加したいシンポジウムのひとつでもあります。(二回目と、次回の四回目の会場は梅田のようです)



今回のシンポジウムのテーマは「造園家とランドスケープアーキテクトの仕事の領域」。登壇者は、庭誌への掲載も多く写真集「水の庭の精神」(建築資料研究社、2014年5月発行)も著されたご存知水景のスペシャリスト、株式会社大北美松園の大北望氏と、同分野の造園とはいえ対象とするスケールが一回り大きい職能であるランドスケープ設計分野の大手、株式会社ランドスケープデザインの佐藤宏光氏。お二人が協力して施工した現場を主題に、過去のお仕事なども伺い、それらの話題に対して質疑応答で振り返る形で、シンポジウムは進められました。お二人の和やかな対談や現場施工時の様子から、お互いにリスペクトしあい、同じ目的意識のもと対等な立場でプロジェクトを進められてきた経緯がひしひしと感じられます。(戸田芳樹先生の途中参加には驚きましたが。。)

水を用いた庭が大好きで、またランドスケープデザイン的な分野も大学で学んでいた私にとってはお二人の登壇、対談は本当に願ってもないような事で、大北氏の水景の技法やその細部の写真や佐藤氏のスケール感、空間の捉え方など技術的、経験的なお話は大変勉強になりました。しかし本シンポジウムで最も心に響いたのは、テーマにも通じる、佐藤氏の「自分の手でものを造っている人の言葉は説得力が違う。設計者には限界がある」ということばでした。主に自然材料を用いることが多く何よりも「自然とは何か」を追求し自分の手でものづくりにあたっている造園職人からすれば、現代の建築(設計)主導の風潮の中でこのような考え方を持って公共的外空間を設計管理している方が業界の第一線に居て頂けるということは大変に嬉しい事であろうと思いますし、それによりニワの未来の希望がどれだけ広がることでしょうか。長々とした質疑にもお二人とも快く答えていただき、その後の懇親会も参加して、大変に有意義な経験をさせていただきました。

本誌が主催するシンポジウムは庭公式ホームページ(http://niwamag.net/)などでも情報を得られますし、どなたでも応募できますので、興味のある方はぜひご参加ください。


そしてその日の夜の懇親会の後、竹芝から夜行の客船に乗り、伊豆諸島は神津島へ一泊の旅行に向かいました。

神津島は、伊豆諸島の有人島としては最西端にある島で、瓢箪のような形をした面積約18.5㎢の島になります。
海水浴やダイビングが楽しめるきれいな海や海岸があるほか、島の中央に位置する天上山(標高は600m程)は、山頂に天然の池や白い砂漠を有し、四季折々の花も楽しめるため、花の百名山、新日本百名山にも選ばれています。岩場に設けられた飛び込みもできる大きな歩道、赤崎遊歩道というところもあります。



やはり造園家見習いとしては、山の植生や面白さの方が気になってしまうものです。時間もあまりとれなそうですが早速天上山へ。遠目からみると、標高の割に広いスケール感を感じさせる地形な気がします。緑が多い尽くしているところが山道のようなので、少し安心します。なんせ真夏の晴れの日です。と思いきや。



樹木が低いんです。耐潮性のあるシダや、マツやシャリンバイ、トベラなどの植生ですが、おそらく潮風と土壌の影響で、背丈以上の物がありません。ひざ下です。確かにこんなところですから当然といえば当然です未熟でした。日光が直射です。買ったアクエリアスがみるみる減っていきます。

時間とアクエリアスの許す限りまで登りましたが、山頂にはたどり着けませんでした。それでも近くの海と少ない市街を見下ろす六合目からの眺めは絶景の一言でした。それにしてもやはり、夏に低山を登るのはよくないようです・・



その次の日は海水浴へ。とにかく綺麗です!海に面した自然の地形や山、浜が貴重に感じられるのは(元)東京民の若者の悲しき宿命なんでしょうか。そして帰りは行きと異なるジェット船で、数時間で帰れました。



短い時間でしたが、海や山、そしておいしいお魚などを存分に満喫することができました。アクセスもいいですし、皆様も、山なら春秋に、海なら夏に、神津島、訪れてみてください。


また、この連休中には自然を楽しむ旅行をするほか、使ってみたい、手に入り辛い道具を買い揃えることも目標のひとつでした。まずは地元の金物屋さんで丸太などをはつる、殴る道具「ちょうな」を。そして、京都に石道具を買いに行きました。



訪れたのは石道具好きの方ならご存知坪田金物さんです。私は親方に教えてもらい初めての訪問でした。
鋏などの他、左官道具や石道具の品揃えが豊富で、石道具はとても頑丈につくられているそうです。
整地等に用いる地ゴテも坪田さんのものは丈夫かつバランスが良いと聞きます。
東京もので石道具初心者の私にも色々と道具の話をしてくださり、大変勉強になりました。
購入したものは、目地ゴテ3種、セットウ3種、石ノミ3種、コヤスケ、鉄平トンカチ等。ビシャン以外のひとまずの石道具一式を揃えさせていただきました。今は柄をつけている最中で、早く使ってみたいものです。



京都にお越しの庭師の方、石道具をお探しの方はぜひ。


そしてせっかく京都に来たからには、やはり造園的なものも見なければなりません。今回は、下鴨神社に訪れました。
下鴨神社は、平安時代以前から存在する京都で最も古い神社のひとつで、世界文化遺産にも登録されています。上賀茂神社の祭神である賀茂別雷神の母の玉依媛命とその父の賀茂建角身命を祀ることから、正しくは賀茂御祖神社といい、江戸末期造替された東本殿と西本殿は国宝に指定されているほか、多くの社殿が重要文化財に指定されています。



そして、東京ドームの三倍にも及ぶ面積を誇る境内の自然林は糺の森と呼ばれ、平安京以前の原生林を残す貴重な森林として国の史跡に指定されています。神社を見に来たというよりは、この森を見るために、ここに来たといっても過言ではありません。親方に、開発状況を見た方がいいとのアドバイスがあったためです。そう、この貴重すぎるともいえる価値を有するこの自然林が、開発に巻き込まれようとしているのです。


 
下鴨神社は、道路をはさんで糺の森に隣接する土地約9600㎡を高級マンション用地として貸し出すことで、その資金を神社の整備に充てるそうです。現在の研修道場を壊した後道路を石畳風に改修し、マンション周辺にも樹木の植栽を行い景観との調和を図るとしています。(開発状況はバリケード内でよく見えませんでしたが・・)



厳密には指定された糺の森区域内ではありません。ですが、ここに鉄筋コンクリート造のマンションが建造されてしまえば、大規模な基礎工事による地下水脈への影響が出るのは明らかと思われます。その水脈が滞ってしまえば、道路一本で分け隔てられている糺の森が劣化することは間違いないのではないでしょうか。現在の研修道場や駐車場周辺にも、糺の森の主要樹木であるニレ科の高木は残っています。その樹木(50本ほど)を避けてマンションを計画する予定が、現行ではマンションに当たる部分の伐採か移植に変更されているそうです。どうかせめて移植されること、土中の環境を考えた道路改修がなされることを祈るのみですが・・

下鴨神社は式年遷宮の費用(屋根葺き替え他)に充てると言いますが、なんのための式年遷宮なのでしょうか。確かに精緻に葺かれた檜皮葺の格式は荘厳ですし、技術継承の場としても機能していると思います。その吹き替えのタイミングとして(諸説ありますが)檜皮の性質を考慮した20年が最適ということもうなずけます。神様に御不自由をかけまいという心は大変尊いとは思いますが、御祭神のみならず、八百万の神様は大掛かりな工事で悪化した環境を見るよりは、少し古くなった檜皮葺でもいいと思うのは私の無知ゆえなのでしょうか・・
下鴨神社も、宮づくりは森づくりから、という方針を持っています。それでしたらどうか、その稀有な価値を有す森に最大限配慮した宮のあり方を、願いたいと思います。

しかし、嬉しいこともありました。なんと偶然にも古本市がやっていたのです。数十はある古本屋の数、数。
全ての古本屋の造園系の本を探すこと二時間、いい書籍を買うことができました。





近代造園史に名を残す作庭家、故荒木芳邦氏が手掛けた勝尾寺の写真集です。荒木芳邦と言えば自然石を用いつつも水平の線を広く取ったカスケードのような滝が印象的ですが、本庭園にもそれが表れています。また前述した大北望氏も同様の滝を多く作られますが、シンポジウムにて戸田芳樹先生の作風への質問に対し「荒木芳邦さんに勝尾寺など様々な庭、滝を見せてもらったことが刺激的だった」と言っていので、嬉しいタイミングでこの書籍を購入できました。



下鴨神社も境内は素晴らしかったですし、夜行バスで着いたその日の夜に夜行バスで戻るというあまり心地はよくない旅でしたが、お目当てのもの+αが手に入り満足できました。

そのほかにも連休中にはボルダリングをしたりテニスをしたり、様々なお酒の席で友人と造園談義出来たりと、とても有意義に、造園的に過ごすことができました。テニスだけ関係ないように見えますが、テニスも漢字では「庭」球と書きますね。うすら寒いことを言って申し訳ありませんが、ルーツはやはり中庭でのアクティビティのひとつなのだとか。また先ほどの道具の話ではありませんがちょうながけの支柱を用いた四ツ目垣や土塀でおなじみの鶴川の庭師の方は昔、荒木田土でテニスコートを作る仕事などもされており、それも今の庭づくりに役に立っているといっていました。ニワを作るには、様々なこと、無駄に思えるような事でも吸収していこうと改めて思った連休です。


久々の更新で長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただいた方有難うございます。その貴重な時間を頂戴しましたゆえに、上記の情報がなにかお役に立てるならと思う次第です・・


それにしても、最近はまた天気が不安定で豪雨が続いていますね。
最近つくばの現場に赴かせて頂いているのですが、常総の方では鬼怒川の氾濫がもたらした洪水被害が甚大のようです。一日も早い復旧をお祈りいたします。
しかし、川の氾濫や洪水など、天災と思われているようなことでも、人災でもあるんじゃないかと思う最近です。自然は科学で制圧できるのだと自然を畏敬する心を忘れ、自然の営みを無視した建設工事をしてしまったら、いずれ自然は牙をむくのではないでしょうか。今回の件でも、過去のソーラーパネル設置による自然堤防の掘削が問題視されているようです。その地に長く住んでいる近隣住民の方はその重要さに気づいていたそうですが・・。
さまざまなことを見直さねばならない時代が来ていると思います。


皆様もくれぐれも事故や体調にお気をつけてお過ごしください。





投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2015年8月 8日 土曜日

真夏の庭園めぐり

高田造園スタッフブログをご覧いただいている皆様、ご無沙汰しております。入社しまして早くも五か月が過ぎました、石井です。
あれほど不安定な梅雨の面影はどこへやら、夕立すら来ない摂氏三十度代後半が毎日のように続いているようです。毎年々々、天気予報で「例年以上の・・」という言葉が聞かれるのは気のせいでしょうか(温度然り、スギ花粉然り・・?)

さて、前回のブログでは、私が休日に拝見しました親方のお庭を紹介させていただきました。そこで今回も、その後訪れた庭園の紹介をさせていただこうと思います。仕事の合間を縫って造園空間を拝見することや、その拝見した造園空間を回想しながら関連文献なども参考、確認して文字におこすことは、書いている私自身も大変勉強になりますので、私のブログでは造園空間の紹介が主となるかもしれません。
その情報が、ご覧いただいている皆様のお役にも立てれば幸いです。

それではまず、東京都は世田谷、二子玉川公園内にあります「帰真園」です。



開園は2013年、面積は約1760坪。入場料は無料。作庭は、近代造園史に名を残す中島健の元で修業をされ代表作「田園調布四季の庭」では造園学会賞を受賞されました高崎設計室有限会社代表の高崎康隆氏。設計業務には、世界規模でランドスケープを創出している株式会社戸田芳樹風景計画、監修は紫綬褒章も受賞されています造園界のオピニオンリーダ、進士五十八氏が務められています。
庭園名には、リターントゥネイチャー、自然に感謝し、自然に帰る。そのような精神が込められています。

この庭園の特徴を端的に表すと、「ユニバーサルデザインと多摩川の縮景を主題とした、現代の公共的日本庭園」といったところでしょうか。

多摩川や国分寺崖線沿いに豊かな自然、文化遺産を有しつつも商業施設などの開発が盛んな二子玉川において、本庭園は環境、教育、福祉に強く貢献することを念頭に置かれ作庭計画が進められました。そのため飛び石や石段等、ユニバーサルデザインの基準には程遠い回遊路のイメージが強い「日本庭園」というデザインの要素ですが、本庭園では車椅子の方でも回遊できるよう緩やかかつ平坦な回遊路を主動線として設けています。それを現代の生活様式における「日本庭園」の特徴とするねらいがあるようです。前回紹介させていただいたホスピスの庭とも通ずる部分があります。


車いすの方でも利用できる茶室、万人席


車いすの方でも利用できる高さの蹲踞。前回の投稿と通じる部分があります


多摩の源流をイメージした滝口。右奥の通路は車いすの方用の視点場


土塁と平坦でのびやかな園路


園内に移築された文化財、旧清水邸書院

しかし気になったのは、樹木の威勢がとても弱弱しいということです。枝枯れを繰り返し棒状に近い姿の雑木が多く見受けられました。恐らく白色系の園路舗装による強烈な照り返しが引き起こす幹の乾燥が原因かと思われます。常緑性の低木などを植栽すれば中高木も楽になるとは思うのですが・・。過酷な都市環境に樹木を植えるときには、様々な事に気をつけねばなりません・・。



次は、静岡出張の際に訪れることのできた、龍潭寺と摩訶耶寺です。

龍潭寺は、臨済宗妙心寺派で733年に行基が開創、もとは八幡山地蔵寺と称されていたようです。井伊家初代の時、その菩提寺となっています。また昭和11年に国の名勝に指定されており、庭園は江戸時代前期の作庭とされています。小堀遠州が作庭に関与したのではと推測される多くのうちの一つですが、本堂建立の30年前に遠州が没していること、庭園の手法が遠州没後の時代を強く反映した手法であること(観賞式でありながら回遊施設の点在、芝生築山の連山、細長い流れと建造物間の狭さ、実際の水面と枯滝の併用等)から、その説の信頼性には賛否あるようです。

三尊石や枯滝、鶴亀の石組やサツキの刈込など、当時形定化された寺院庭園の様式を忠実に伝承する本庭園はとても貴重であるといえます。


全景。しっかりとそれぞれの役石が明確に残っています。


あまり注目されることない石庭。



摩訶耶寺は、高野山真言宗ですがこちらも行基が開創とされています。(726年)奈良時代から今日まで数々の兵火、天災から守られており、厄除けの寺としても高名です。文化財に指定された不動明王像、千手観音像、阿弥陀如来像などを有しています。寺の名の由来は梵語のマカヤーナの音写で、優れた教えを意味しています。

庭園が発見されたのは昭和32年と新しく、竹林清掃中に発見されました。そして後昭和42年に日本庭園研究会と京都林泉教会の合同調査によって発掘復元されたものです。作庭年代を証明する文献的証拠は発見されていませんが、石組や地割の構成から、京都林泉教会の重森三玲は平安末期、日本庭園研究会の古河功は鎌倉初期と推定したようです。しかし近年では江戸時代の作庭ではという説も。しかしながら平安末期あるいは鎌倉初期付近の庭園であれば、その時代の庭園は京都や奈良、奥州平泉以外の地域にはほとんど存在しませんので、かなり貴重な庭園遺構であるといえます。私は大学生時代、庭園遺構の池底や護岸の構造について卒論を書いていたのですが、本庭園の報告書に記されていた池底に粘土と砂を(交互に?)敷設するという工法は平安時代に数件見られた工法でもありますので、その部分だけみると重森の推察と重なるところがあります。
当時の植栽を推定、復元することが難しいため、石組と地割が強く印象に残るところは、発掘庭園特有の特徴といえそうです。


石組全景


門のどっしりとした佇まい



しかしながら、今夏は本当に暑いですね。ここ数年、人々が心の底で「異常気象」という四文字を意識せざるを得ない、そんな時代なのではないでしょうか。手入れや作庭にて雑木の作ってくれる涼しげな木陰を見るたび、やはりこのような現代において人と自然の生活環境を救えるのは、造園という職能をおいて他にはない、そのような気持ちで仕事に臨んでおります。

これからお盆休みをいただきますが、折角の連休、家庭の用事のみならず造園的に有意義な連休にしたいと思います。

工事などお待ちいただいているお客様、ありがとうございます。このような機会で養った経験をお客様のお庭にも還元できるよう精進いたしますので、しばしのお時間お待ちくださいませ・・
またこの時期お一人でお仕事されている(特に外仕事である同業者の)方々、くれぐれも熱中症にはお気を付けください。現場にてお一人で倒れてしまったら、気づいてくれる方もいませんので・・。室内でも熱中症にかかる方は多いと聞きます。

しかしこの猛暑だからこそ、木々が作る木陰のありがたさが身に染みてわかる時期でもありますね。ですがこの雨の降らない今夏、その樹木たちも水がほしいといっていることも多いと思います。庭木や鉢物がそのように語りかけてきたら、頑張っている樹木に一服させてあげてください。

次回は連休中に体験、拝見した事柄を書かせていただきたいと思っています。
重ね重ねになりますが、くれぐれも体調にお気をつけてお過ごしください。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2015年7月 3日 金曜日

梅雨の合間に

高田造園スタッフブログをご覧いただいている皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
今週はまさに梅雨!と言わんばかりの天気ですね。今週初めに週間天気予報をチェックした関東の方、特に外仕事を生業とする方はあまりの雨マークの多さに驚かれたのではないでしょうか。。
高田造園はそんな天気と戯れております。ご無沙汰しております石井です。

前回の更新から随分日にちが空いてしまいました。
新芽が固まり始めたこの時期、高田造園は手入れに造園工事にと各地を行脚しております。
その際の様子や竣工、進行中の庭については高田親方のブログ等を参照していただければと思いますので、今回は、僕が先日の休みの日に拝見したお庭の事を更新させて頂きたいと思います。


田畑や豊かな緑に囲まれた千葉県若葉区の高根町。そこに、一つの整形外科があります。

この病院を創業した理事長の方は、「体の不自由な患者の方が広い庭を自由に散歩しながら、花を楽しみ、緑の風に吹かれて心安らげる、そんな病院を作りたい」と当初から考えられていたそうです。そして、庭の一角に四阿のある日本的な庭園を作りたい、と高田親方に依頼されました。親方は、体が不自由な患者の方でも楽しめるよう、車椅子でも回遊しお茶を楽しむことのできる配慮がなされた庭園と四阿を作りました。完成は、現在から約10年ほど前だそうです。



庭園の入り口、全景です。柔らかい樹形の雑木たちに癒されます。車椅子でも園路を不自由なく回遊できるように配された、目地の狭い石畳が美しいです。。




四阿全景。設計管理は伊藤平左衛門建築事務所の中山さん、施工は高田造園ブログでもおなじみ川上棟梁です。



四阿に接続する、もう一つの園路。車椅子の方に配慮した目地や勾配が、とても優しげです。
三和土にもとてもいい苔がのっています。






四阿の内部。炉と水屋が配してあり、車いすの方でもお茶会が楽しみやすく配慮がされた設計がなされています。



車椅子の方でも利用できる高さの蹲踞。力強い石組と役石に囲まれた手水鉢は二重升型で、桂離宮の外腰掛のものを彷彿とさせます。




四阿に接続するメインの園路。とても丁寧な、配慮の伝わる優しげな石畳です。




数石配された石臼がリズミカルな足元の景色。




奥へと向かう園路。足元を気遣って照らすような灯篭も、また穏やかな表情で据わっています。




園路途中の敷石と三和土。




空積で行われたという石積と板塀。シンプルながらも、塀の笠と大ぶりの石積がなんとも言えない安堵感を与えてくれるようです。。






蹲踞周りと同様力強い石組と、地表の苔と実生のモミジたち。ほんの少しの雑草たちと落ち葉も調和して、グラウンドカバーのように地表を覆う見事なモミジと、穏やかな地表を形成しています。実生木を大切にしている掃除が、このような素晴らしい地表を育成するのだと感激しました。石組は、体の不自由な方に精気を奮い立たせるような、生命力に満ち溢れた気勢をもって据えられている様に感じます。




このお庭を私が知ったのは、高校三年生の春頃でした。当時私は造園系の高校に通っており、その卒業制作として、実際に施工し文化祭にて展示、開放する庭園の図面のアイディアを考えていました。その頃祖父が車椅子生活を余儀なくされていたことから、私は祖父にも見に来ていただける、車椅子に配慮された優しい日本庭園を、とコンセプトを絞り資料を図書室で収集していたところ、「木もれ日を楽しむ 雑木の庭」(主婦の友社、2008年出版)という本の特集に掲載されていたこのお庭を知るに至ったのです。同時に、私が現在勤務している、高田造園設計事務所という会社、親方を知ったのもここからでした。

現在もですが、当時私は現在より庭の「に」の字も雑木の「ぞ」の字も知りませんでした。その上、車椅子に配慮した日本庭園を、と考えていた私にとって、このお庭はあまりに衝撃的だったのを覚えています。すぐさま書籍を購入し、2ページの特集に掲載された6枚の写真と文章を食い入るように見ながら製図を行っていました。(結果勿論、このようなお庭を作図、施工できたわけではありませんでしたが。。)
そして高校、大学を卒業し、現在はその書籍で見た会社に勤務しています。こうして改めて振り返りながら言葉にしてみると、何か、不思議な感覚です。

仕事の合間に、自分の原点ともいえるようなお庭を拝見できたことは、とても嬉しく、感慨深い気持ちになりました。
入社してからあっという間に三か月が過ぎてしまいましたが、初心を忘れず、かといって未だ見習だと甘えず、日々、精進していきたいと思います。

天候の変化が大きいこの季節ですが、露に濡れたお庭を眺める事ができると考えればいい季節でもあります。
皆さまも体調にお気をつけてお過ごしください。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2015年6月 3日 水曜日

「くにたちの風土 再生講座」参加状況のお知らせ

たくさんの方のご参加応募ありがとうございました

お陰様で6月7日(日)につきましては定員満員となりました
7日のみのご参加希望の方、大変恐縮ではございますがキャンセル待ちとさせていただきます

なお、7,8日連日でのご参加希望、8日のみのご参加希望の方、引き続きご連絡お待ちしております

何卒よろしく申し上げます

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2015年6月 3日 水曜日

杜の園芸からのお知らせ  上野原里山環境改善整備講座2015

杜の園芸主催・上野原里山環境改善整備講座2015 3回目

自然と共にある、命と共にある農作業を、上野原で体験してみませんか
春本番の田植えから始まって、季節に見合った、風に習った草刈り、剪定手法、空気と水の動く水脈整備、荒地の開墾手法と農道小径の作り方、簡易的な炭焼き手法などといった農地整備を、実践を通して作業していきます。


<実作業内容>
① 季節に応じた畑、田んぼ、果樹畑のメンテナンスなど作業手法と考え方
② 荒山林整備
 風と水の通る荒地整備の基本・道づくり整備の基本など
③ 簡易的な炭焼づくり・炭の利用法
④ 環境視点を用いた農地作業(田植え等)

<スケジュール>

6月13日(土)

13:30 集合&受付
場所:「杜の園芸・古民家宿泊舎!」山梨県上野原市桑久保873
※前回と場所が変わります。

14:00 座学・実作業

17:00 夕食の準備等
※参加される皆さんにも食事の準備等をお手伝いいただきたいと思います。ご協力よろしくお願い致します。
   
18:00 お風呂(秋山温泉)

20:00頃 古民家にて夕夜食、懇談

6月14日(日)

7:30 朝食

9:00頃 実作業

13:00 昼食

14:00 実作業を含めたまとめ

15:30 終了
御希望者は、夕方まで質疑、実作業タイムOK

<ご予約について>
メールで受付致します。お名前、ご電話番号、参加人数、参加希望日等を書いて以下のアドレスにお送りください。

morinoengei@gmail.com (担当:矢野、後藤)

090-1537-3755(矢野)

締切は6/10までとします。それ以降の受付は状況に応じて対応させていただきます

<参加費>
 講座費:各日4000円
 食 費:1日目夕食 1000円
     2日目朝食 500円
         昼食 500円
施設使用費: 各日1000円
(休憩とステイに古民家をお使いいただきます)
     

<講座・ステイに参加される時の持ち物>

・上野原駅前、『杜の園芸』近くにはお店がありません。
お昼ごはんと水筒をご持参くださいますよう、お願いいたします。

・作業着(長袖・長ズボン)、長靴、タオル、水筒、帽子、軍手(よくある綿のではなく、手のひら部分がラバー素材もの、ホームセンターなどで買えます)、雨具(カッパ上下)ステイはある方はシュラフ持参ください(布団あります)。
 
・移植ゴテ、ノコ鎌など(お持ちであれば)

<交通>
・車:ナビで検索できれば、「西東京パラグライダースクール」または、「山梨県上野原市桑久保」を検索し、お越しください。
お車は、西東京パラグライダースクールの手前、道沿い左手の大きな駐車場にお止めいただき、「桑久保873番地」にお越しください。(駐車場はパラグライダースクールの敷地内ではありません)

※ナビ検索ができない場合
上野原ICを出てすぐの信号を右折、
直進して国道20号のT字路を左折、
商店街を通って、上野原市役所を過ぎて約400mの次の道(県道30号)を 右折、
道なりに約5kmほど、左側に「平呂下」と書かれたバス停が見えてきますので、それからはご案内致しますので、ご連絡ください。
(090-1537-3755 矢野)

・JR&バス  JR中央本線 上野原駅 北口下車
 上野原駅北口より バス約16分
    本数がとても少ないです。
 富士急山梨バス
 不老下(ふろうした)線 「不老下」行利用
 「桑久保入口(くわくぼいりぐち)」バス停 下車
 バス停より徒歩15分。ご案内致しますので、ご連絡ください。
(090-1537-3755 矢野)

 上野原駅発~桑久保入口バス停着 (約16分)
 8:45 ~ 9:05
 10:39 ~ 11:01(*土日祝日のみ)

 桑久保入口バス停発~上野原駅着
14:25 ~ 14:43
 15:33 ~ 15:51(*土日祝日のみ)
 16:20 ~ 16:38
 17:38 ~ 17:56



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