竹内

2014年3月13日 木曜日

大工塾その2 刻み編

前回より引き続き農具小屋の加工です







倉庫での作業は
構造躯体の梁、柱、胴差(腕)のほぞ・ほぞ穴作りがメインとなります、躯体には釘の一切使わない木組で行います
鑿(のみ)を持ち材木に1つ1つ丁寧にほぞ穴を掘っていきます。
ほぞとほぞ穴がしっかりと合致するように抉りすぎないように気を付け、眠っていた材に再び命を吹き込みます

今でこそ古民家再生で貴重視されるようになった古材
「昔は丸太の材が当たり前だったんだよ、機械がなかった昔は張娜(ちょうな)や槍鉋(やりがんな)なんかで荒く表面を削るだけ、
当然大きな丸太を扱う技術もあったのよ、それが当たり前でね、今はみんなそっちに価値を置いてる。
それを扱える人間もかなり減ったからね、時代の流れだよ」(棟梁)

事務所の古材倉庫を開けると昔の空気を感じます、何十年という年月、自分よりもはるかに年を重ね、生活の一部として生きてきた材木からは人ととの深い繋がり、家を支えてきたという何にも代えられないずっしりとした風格を感じます
それを難なく扱う棟梁からもやはり同じような空気を感じずにはいられません...





ほぞ穴が出来ると早速梁に柱を入れ込みあたりを確認します
円形の梁のなりを柱にひかりづけ(丸太の形状を墨で写し取る作業)を行ない平鑿と丸鑿をうまく使いながら柱のほぞを作っていきます。
胴突き部分はいじめないように線残しで慎重に...とやっていく中、棟梁のトントントンという軽快な玄能の音、髪の毛より細く、墨の1線を見事に残していきます。
思わず見惚れてしまいます





ほぞのできた材から墨をのばすように塗装していきます
出来るだけその材を活かすように塗料は灰墨とサラダ油のみで化粧をしていきます
灰墨と油をよく混ぜ、乾燥したタオルでよくこするように、拭きます。
サラダ油の柔らかな光沢、灰墨の黒は木目を品よく浮き立たせます

と倉庫加工はここまで!
次回 束石に柱建て 上棟編へと続きます
















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2014年3月10日 月曜日

大工塾その1 墨付け編--―事務所にて

進行中の鹿島の現場

週末農業を楽しまれるお客様のご希望により、今週から本格的な農具小屋の施工に取りかかります


棟梁の川上徳房さんは高田造園と10年近くのお付き合い、これまでに鎌倉の陶芸小屋、土塀、佐倉市の古民家改修などで
60年近い経験、磨かれた技術と並外れたセンスで高田造園のお庭に風景を添えてくれます
特に、曲がった梁などの古材(古家を解体した材料)を再利用した小屋作りは遊び心にあふれ、お客様だけでなく周囲に住まわれる方々も楽しみにされるほど、懐かしいようで斬新な思わず目を惹く佇まいです

今回は材料選びからご同行させていただきました

材木はは高田造園の古材置場で小屋の寸法に合わせ太さや曲がり具合などを見ながら扱いやすく、丁度良いものを選んでいきます。
ここに置かれているほとんどの古材が千葉県産の材木です
「その土地でとれた材は強いよ」
棟梁の馴染みの言葉です
「どんなに優れた材でもその土地だからこその強さなんだ、気候が違えば、湿度も違う、東北や関西の有名な材を使ったってその土地の物には敵わないんだよ」
木心を知る言葉はいつも何かを気づかせてくれるようで、一緒にいるときはその言葉の先や思考をつかみ取ろうと気が休まりません。木も人も同じなのだろう...




さて事務所に帰って集めた材料を並べます
材料の加工の前に大事な墨付け作業の始まりです
まずは寸法を測る尺杖から作っていきます。歪みのない真直ぐな材に1尺(約30㎝)ごと印をつけてゆきます。
昔はこの尺杖1本で家を建てたというから驚きです




尺杖を作り次に墨を付けるのは今回の見せ場となる曲がりのある扱いの難しい梁です
よーく木のなりを見つめ尺杖をあてがいます
荷重のかかり具合や屋根の形状を計算しどの面を心にするかを決めます







寸法に余裕をもって切った材にに心墨をうちます
心が決まれば次は陸墨みです




陸は高さの基準となる線のことです、棟に垂木彫りをするのですがこの時になるべく木をいじめない高さに決めます。
心と陸がすべての始まりであり最も肝要な墨となるのです


(陸墨図)


その後、柱位置と垂木の位置を墨付けします

次回大工塾その2 刻み編へ続きます





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