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自然環境に配慮した素材を


自然本来の素晴らしさや自然と共に暮らすことの大切さを伝えることも、庭造りの大切な役割の一つと考えております。そのため、庭造りの素材についても様々な配慮を心がけております。
 

土・石・木という素材の原点に立ち返る

庭つくりの素材は、その辺にある自然の中から探し出すことが世界共通の本来の姿でした。
 

周囲に石がたくさんあれば土留めに石垣をつくり、竹がたくさんあれば垣根の素材に竹を用い、そしてその土地の土を塗って壁を作るといった具合です。

その地域の材料を工夫して用いることによって、その風土独自の故郷の風景が造られてきたのです。

今ではこうした身近な自然との繋がりも希薄になり、カタログで選べる共通の素材ばかりが出回り、日本中どこに行っても個性のない風景ばかりが増えてきてしまいました。

街や住まいの環境が個性を失い、その土地の自然の恩恵から切り離されてしまった今の住環境で、はたして郷愁や自然へ愛情などを育むことができるのでしょうか。

私たちは庭造りの際、なるべくその土地本来の自然樹木や土、石を用いることを心がけて、その土地らしい本物の風景を作ることを心がけております。

それがかつての美しい日本の風景を現代に再生するための一助となることを夢見ています。


 

素材の産出先を考える

世界中の様々な材料が安易に輸入され、木材から石材に至るまで、庭の素材はそれこそカタログ一つでなんでも選べるようになりました。


こうした素材を庭の中に取り扱う際、私たちはその素材がどのような過程で製品化されて、そしてどこから運ばれてきているのか、それが果たして持続可能な生産の産物であるのか、自然やその土地本来の持続的なの暮らしの破壊の上で、製品化されて日本に輸入されてきているものなのか、こうしたことを考えるべきではないでしょうか。

グローバルな流通がいけないと言っているわけでは決してありません。また、庭に用いる輸入素材のすべてがよくないというわけでもありません。

 

しかし、庭の素材に、必需品などはありません。私たちが自分たちの庭を美しくしたいがために、自然界にたいして大きなインパクトを与えて遠い国の自然や暮らしを破壊し、そしてはるばると貨物船で輸送してまで庭に用いる意味はどこにあるのでしょうか。

地球環境や健康に対する意識の高まりから、食糧や建築材料など自然の素材は地産地消が原則という認識が浸透しつつあります。

庭で用いる素材も、その土地の素材を見直してみるのも面白いことと思います。身近に入手できる自然材料を工夫して使う中に、オリジナルの味わいがあり、創作の喜びも味わう事ができます。

世界中の素材が安易に入手できる中、私たちはその素材の産地や生産方法を調査した上で、可能な限り地球環境や地域環境に配慮した素材をご提案しております。


 

画像|ボルネオの熱帯雨林に林立する巨木。輸出用の木材乱伐によって、急速に姿を消してゆく。熱帯雨林から伐採されるジャラやウリンなどの硬質木材は日本でウッドデッキ材などの庭の素材として重宝されるが、こんな貴重な自然を破壊して楽しむ庭に何の価値があるというのだろうか。

 


 

土や人に有害なものを極力用いない

様々な揮発性化学物質が我々の住環境を汚染しています。

建築材料においては、クロルピリホスやホルムアルデヒドなどの一部の有害化学物質に関しては建築基準法に基づくシックハウス対策によって使用が制限されておりますが、実際には規制対象外の有害物質はたくさんあります。また、その安全性が明らかにされていない様々な化学物質も、塗料や接着剤、木材燻蒸剤など、建築材料の中にたくさん用いられています。

屋外である庭においてはさらにひどく、外材を中心とした木材燻蒸剤、木材防腐剤、セメント混入材、接着剤、石油系の塗り壁材など、いたるところに有害化学物質が野放図に使われております。

それらはゆっくりと長い時間をかけて揮発し、住む人のみならず、庭の生態系にも悪影響を及ぼします。
私たちはこうした化学物質を極力用いることなく、人にとっても自然にとっても健康で害の少ない素材をご提案しております。


 

素材のリサイクルを考える

日本庭園の源流の一つで、今も日本人の価値観や文化に大きな影響を及ぼし続けているのが千利休による茶の湯です。

古くなってなお味わいを深める素材の美、例えば使い古されて壊れかけた石燈籠や、母屋の雨戸板を再利用した草庵茶室のにじり口、雨落ちの縁や延べ段に用いる古瓦など、使い古されたモノに新たな命を吹き込んで新たな美を発見し、庭に用いたのが千利休の茶の湯の世界でした。

自然から切り出す素材には限りがあります。古くからの石の名産地、土の産地でも、深刻な自然破壊が問題となって採掘禁止となる地域も徐々に増えてきました。

その一方で、古い家屋や庭が解体される際、まだまだ長く使うことのできる素材が大量に廃棄され、あるいは埋め立てられているのも現状です。こうした古材の多くは大切に扱えばまだまだ使えるものばかりであり、まして石材などは半永久的に使い回しすることも可能なのです。特に庭の世界においては、新品の素材では決して表現できない豊かな味わいを、古材を用いることで表現することもできるのです。

私たちはリサイクル可能な素材をなるべく収集し、そして庭の中で新たな命を吹き込んで、工夫を凝らして再生利用することを常に心がけております。


 

廃棄物を減らす

なんでも材料として使い回しできるのが庭の世界です。それを考え、限りある自然の恵みを暮らしの中に上手に生かすことこそ、人間本来の生活の知恵というものなのかも知れません。

コンクリートガラなどの建築廃材は、土間や石畳の下地補強に再利用し、石材は新たな使い道を探し出します。そして剪定枝は土壌化して農地や庭の客土に還元し、叩きの土や壁土は無論再利用できます。
基本的に土・石・木といった自然素材は、再生利用も自然への還元もいずれも可能です。

しかしながら、化学防腐剤などの有害物質を加圧注入された木材や、接着剤を用いた合板や集成材、プラスティックや化学塗料などの石油精製品は、すべて有害な廃棄物と化してしまい、決して自然界の循環の中に還元することもできなければ、再生利用することもできません。

こうした素材は極力使用することを避けております。
自然の移ろいを享受する中で、心に豊かな糧を送り届けることも自然あふれる雑木の庭の役目の一つです。たくさんの恩恵を受けている以上、なるべく自然を痛めることがないように配慮する気持ちを持たねばなりません。


 

日本文化としての庭作りの良さを現代に伝える

四季折々の自然豊かな日本、私たち日本人は、この豊かな自然の恵みに感謝し、敬い、身近な自然の中に美を見出し、そして自然と共にある豊かな生活のスタイルを作りあげてきました。

日本の様々な芸術文化は、この豊かな自然への称賛の上で創造され、そして自然に対する人の分というものを謙虚にわきまえながら営まれてきたと言えるのではないでしょうか。

庭作りにおいても、自然界のかすかなサインを敏感に感じ取り、それを情感的に形あるものへと昇華させる日本人の繊細な美意識をベースにしつつ、自然を体得して一体化しようとする豊かな心を庭作りを通して育てつつ、伝えていきたいと思います。