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| 奥秩父主脈の静かなる霊峰、飛竜山 (山行:平成19年1月) |
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東京都最深部、最高峰を誇る雲取山から西に、主脈稜線伝いに辿ると飛竜山が威風堂々たる姿で一際大きくどっしりと構えて天と対峙しています。
奥秩父の深い森を従えて聳え立つその姿は、まさに太古の昔から幾多の命を育み続けてきた、森羅万象の神の権現といった様相を呈しております。そう、ここは東京都水源林最深部、命の水が滾々と育まれ、都会の生活をこの森が静かに守ってきたのです。
飛竜山は深い山中に位置し、アプローチは長く登山者をも容易に近づけません。それがこの太古の雄峰をして、いまだに静かなる名峰と言われる地位を人知れず守り続けている所以でありましょう。
登山をはじめて20年、私にとって宿願の山でありました。雲取山や甲武信ヶ岳、大菩薩嶺といった周辺の名峰は大方踏破した私も、いまだこの山中奥深い森の静かなる名峰には、足を踏み入れる機会がありませんでした。
正月も明けたばかりの1月はじめ、二十歳を過ぎたばかりの若い弟子を連れ、積年の想い募る飛竜を目指しました。 |
麓の寒村、丹波山村から里山を抜けて峠を目指します。南面の陽だまりの小道、光と戯れる落葉、踏み跡沿いにわずかに残る雪が私たちを小声で誘導してくれるようです。 |
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里山の残り雪は、わずかな日当たりの違いでその残り方は大きく変わります。それが植生などの様々な変化ある景色を生み出します。 |
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かつては丹波山村から武州への山越えの峠であった、サオラ峠にて。峠はいつも、かつての峠越えの村人たちの営みを感じさせられます。高校時代の一人旅、この峠で山並みをスケッチした日を懐かしく思い出しました。 |
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サオラ峠を越えて、幾多の尾根を迂回しすると、権現谷を渡ります。既に雪は深く、寒々とした空気の中、清らかな水が雪の間を足早に流れ去っておりました。葉を落としてもなお深い太古の森が、多摩川の源流となり、都民の生活水を黙って支え続けているのです。 |
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幾多の尾根を迂回し谷を越えると、大きな谷を見下ろして建つ、三條小屋にたどり着きます。ここが今夜の宿、効能豊かな鉱泉は、300年以上も昔から地元猟師たちに知られ、利用されてきました。夜はだるまストーブで暖をとりつつ、小屋番の兄さんが煮込んだ猪や焼酎を頂きながら語り合い、静かな山の夜を満喫しました。 |
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三條小屋の泊まり部屋にて。
人里はなれた山小屋の時間はゆっくりと流れます。明るいうちに小屋に着き、酒を飲んでは景色を眺め、湯に浸かり、また酒を飲んでは本を読んだり、そうこうしているうちに、日はゆっくりと尾根の向こうに消えてゆきました。とても贅沢な時間です。 |
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翌日朝、飛竜山頂を目指して歩き始めます。雪は深いところで腰まであり、冬山登山フル装備が必要です。 |
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小屋を出て1時間、主脈稜線上に飛竜山が寒々と、ようやくその雄姿を見せました。 |
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コメツガに覆われた深い森の中に、飛竜山頂がありました。この深い森がたくさんのケモノを育み人を育み、そして命の水を育んできました。 |
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山頂からの景。見通しの悪い山頂ですが、樹幹越しに富士山が見えます。 |
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山頂直下、禿岩からのパノラマ。澄み切った空と幾重にも連なる山襞のかなた、白銀の山頂は南アルプスです。 |
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南アルプス稜線遠望。ひときわ高く連なる日本の壁。その雄大な風景を表現する言葉が見つかりません。 |
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眼下のパノラマに魅了されつつ煙草をふかす若僧21歳。彼にとっての初めての登山がこの山行です。山は若い魂に、熱い何かを語りかけていることでしょう。 |
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飛竜南面、ブナ林の広く気持ちよい尾根筋を、滑るように下山します。 |
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山村の日暮れは早く、山襞の向こうに日が翳る頃、ようやく、ふもと丹波山村に帰りつきました。交通の便もままならない寒村の人の営み、そして太古の昔から変わらぬ山の息吹、目まぐるしく進む都会の日常の中、本来の人のリズムや自然との関わり、今回の山旅は、あわただしい私に大切な事を思い起こさせてくれました。 |
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