ホーム > 造園施工例 > 6|小さな庭、狭いスペースの工夫

造園施工例――6

小さな庭、狭いスペースの工夫



「うちの庭は狭いから・・」と言って、潤いのある暮らしの環境つくりを諦めている方々もいらっしゃることと思います。しかし、私たちにとっては制約条件の多い、狭いスペースこそ、造園設計の腕と感覚の見せどころなのです。

庭は必ずしも広ければよいというものではありません。狭いスペースだからこそ出せる雰囲気もあり、また周囲の雰囲気をどこまで取り込み、どこまで遮蔽するか、空間感覚の力量が、設計施工者に求められるのです。

小さな庭、狭い庭こそ、そこでしかできない品格ある空気感を生み出す絶好のチャンスでもあるのです。

 



>> 以下の画像はクリックで拡大表示します。


[
千葉県船橋市M氏邸] 幅わずか1.2mほどのスペースに、
西日除けの植栽と玄関アプローチを配しています。


こんな狭い場所でも、植栽の工夫で潤いあるアプローチが生まれ、
なおかつ夏の西日から住まいを守る環境改善植栽ができるのです。



低めの木柵の外は、敷地内の駐車スペースのため、
塀の外に枝葉を張り出すように植栽することで、
こんな狭い場所でもボリュームある緑と空間が得られるのです。



木柵の外側、駐車スペースにも植栽し、
前後の奥行き感を出していきます。



わずかなスペースの植栽が夏の西日を遮り、家屋の外観を緑豊かに引き立てます。


塀外、駐車場に設けた植栽スペースは、
わずか60センチの張り出しですが、
塀の前後で植栽が繋がる効果は計り知れません。

狭い場所でも、わずかなスペースの植栽を的確に配することによって
住環境を緑で包み込む奥行ある植栽ができるのです。


広いところで幅2mほどの南側主庭も、大和塀を後退させて設置し、
塀の外に植栽することで、豊かな緑を見せながらも空間を確保しています。



道路より。大和塀の外に幅50センチほどの
植栽スペースを設けています。
塀外の植栽は、外からの景観を美しく緩和し、
なおかつ塀の前後の植栽を繋げてゆくことで
奥行きとスペースが生まれます。



[
東京都杉並区N氏邸(施工直後)] 正面駐車場から、
非常に狭い南庭に至ります。幸い隣地に木々があり、
木柵によって隣地の景色を切り取り取り入れます。

 
狭いスペースでは植栽だけで遮蔽するのではなく、
木柵などの塀や垣根で補いことで空間をすっきりさせることも効果的です。

 


[
千葉市緑区M氏邸] 既存の駐車場と家屋の間、
幅2.5m程度の狭いスペースを活かして植栽し、
家屋外観に十分な潤いを演出しています。

 



植栽できる敷地は狭くても、頭上の空間は意外とあるものです。
狭いスペースでは木々を上下に重ね合わせて立体的に植栽し、
そして上部の空間に枝葉を広げることによって緑のボリュームが得られます。
駐車場に張り出す植栽によって、実際の面積以上に豊かな緑の住環境が生まれます。

 



狭い幅でも上下空間に凝縮してまとめた植栽によって、
空間も落ち着き、潤いも生み出されます。
狭くても、その土地の特徴を活かしてどうにでもなるのが造園の技なのです。



そして、家屋中庭のドライエリアにも
1.2m四方の植栽枡を作り、木々を組み合わせます。
中庭は、室内4方から鑑賞できる、とても省スペースな潤い空間です。

 


中庭の植栽を屋上から見下ろします。
一坪に満たないたった一カ所の小さな植栽ですが、
階層的な組み合わせによる植栽によって、
1階、2階と、それぞれの部屋から様々な緑の表情が楽しめます。

狭いスペースでは坪庭空間の存在が暮らしを大きく潤します。



[
神奈川県横浜市I氏邸 (施工直後) ] 
2mの擁壁上の家屋、階段を上ってわずかな面積の外空間に至ります。

 

階段の左右の植栽幅は、合計で1m程度ですが、
トンネルのように階段に枝葉を張り出すことで豊かなボリュームが感じられます。


 

玄関前から奥庭を見ます。どんなに狭くても、
植栽で埋め尽くすのではなく、庭には空間が必要です。
空間の存在が木々の存在をより際立たせ、
奥行きと心地よさを生み出します。

 

足元を品よくすっきりと仕上げること、むやみに植栽を入れ過ぎず、
効果的・立体的に木々を扱うこと、そんなところが小さな庭つくりの秘訣かもしれません。

 

[千葉市緑区I氏邸] 駐車スペース脇のデッドスペースに
2か所の植栽スペースを設けて植栽し、殺風景だった駐車場を潤します。

 


駐車場も大切な生活空間の一部ですから、スペースを上手に活かして潤いある空間を作りたいものです。