松下

2021年4月 1日 木曜日

今までお世話になりました

みなさまこんにちは。

スタッフの松下です。

今回の投稿が、高田造園設計事務所での最後の仕事になります。


私事ですが、この度4年間勤めさせてもらった高田造園設計事務所を退職し、独立しました。

この場を借りて、私ごとを書かせていただける機会をいただけたことを感謝申し上げます。

私は4年前の2017年に入社し、今年まで4年間お世話になりました。

それまではごく一般的なやり方の造園業として8年、別の会社に勤務しました。

その8年の中で私は、「これからの雑木の庭」という雑誌で親方を知り、庭空間の写真を拝見し、その庭の空間構成に惹かれ、自分は将来このような空間を作れる造園家になりたいと思い、弟子入りしました。

親方の空間作りが好きで入らせてもらいましたが、入社してからは環境改善を交えた仕事、そのような現場に身を置いて作業を行い、その作業前後の様子を体感することで、樹木の配置などの空間構成にもまして大切なことに気づかせてもらいました。

私は独立したら、自分が手掛けていく空間は、そこに身を置く人にとって心から気持ちの良い、居心地が良いと感じてもらえる、そんな空間にしていきたいと思っていました。

今までは、それは木の配置であったり、石の配置であったり、陽の当たり方であったり、視覚から感じとれるもの、見た目から感じるものによって、決まっていくものだと思っていました。

ですが、高田造園で日々現場で体感を重ねると、その場に身を置くことで感じられる感覚的な気持ちの良さ、悪さの存在に気付くようになりました。

感覚的な心地良さ・悪さというのは、その場に身を置いていると、私達の視覚・嗅覚・触覚・聴覚・味覚が無意識に感じ取って、判断しているその空間から受ける印象です。

人は、その五感から受ける無意識の印象を総合して、その場を心地よい、悪いと判断しています。

鳥のさえずり、川の流れる音、虫の声、陽の光、葉の揺れる音、草の匂い、土のにおい、花の香り、落ち葉を踏みしめる音、花が舞い散る様。

このような自然からダイレクトに受けるメッセージのほか、

そこにいるとなんか暖かくてほっとする、

風が通り抜けると爽やかで気持ちが良い、

深呼吸すると空気が美味しい、

その場にいるとなんかワクワクする、

はぁと思わず声が漏れそうになる、

その土地がなんかしっとりと感じる。

「そんな時は大地が呼吸していて、植物・樹木・小動物・虫・菌類・微生物たちの生命の躍動を感じる。」

また逆に、

何となくこの場所にいると不快だ。

なんか嫌な感じがする。

なんか蒸し暑い。

ムッとする。

変な汗が出てくる。

乾いた感じがする。

荒れ地の感じがする。

地面がじゅくじゅくしている。

地面が底冷えしている。

など、

「そんな時は大地が詰まっていて、呼吸できないで喘いでいる。

苦しんでいる。

生命の躍動がほとんど感じ取れない。」


いつしか私もその空間に身を置くことで、そんな風に感じるようになりました。

環境改善の仕事を通して、その土地の呼吸を取り戻してやること。

つまり、その土地の、土中の水と空気の流れの滞り・詰まりを取り除いてやること。

様々な生命が育まれ、躍動し始める土台を取り戻してやること。


大地が呼吸し、すべての生命の躍動を感じ取れることが、詰まる所、人が無意識に感じている心地よさの源なので、今後はそれを自分の造園の核として取り組んでいこうと思う次第です。


風土工学の提唱者・佐佐木綱氏の景観十年風景百年風土千年―21世紀に遺す という著書のタイトルである、

 「 景観十年、 風景百年、 風土千年 」 という言葉があります。


著書を引用しますと、

〝「景観が損なわれる」という言葉を耳にすることが多いが、景観とは壊されるもので十年間以上は定着しないもの。
そして、壊されずに残るものが風景といえ、さらに、評価が定着すると風土になるという意味である。

どこの地域でも新しい景観を造れば最初を良いなぁと思われるだろうが、その地域の個性というものを把握し、その個性に適した景観でないかぎり、その景観は色褪せてきて風景として後世に残ることは不可能だろう。百年残ってはじめて風景としての独自性を有することになるであろう。
風土が形成されるためには、風景よりも長い千年近くの年月を要するだろう。何世代にもわたる住民たちの祈り、思い入れ、願いといったものが蓄積されなければならない。″

景観は、今現在の私達の暮らしを反映するが、いずれ壊れゆくもの。

風景は、過去から今現在にかけての歳月を経て、その地域の独自性を帯びて、景色として定着したもの。

風土は、その土地の時間軸の中に、そこで生活を営む人々の歴史、文化が蓄積され、その心を読み取れるもの。

私達の日々の生活の営みが、いつしか時を経て、風土となり、そしてその土地に息づくことを考えながら、後世へと「景観」を「風景」として繋ぎ、育んでいかなくてはいけません。

そのためには単なる人間としてではなく、同じ大地の上で生きる全ての生き物の一つとして、生命の躍動に共奏していかなくてはいけません。

この地球に生きる造園家として、大地が息づき、生命のリズムが脈動する環境を作り出せるよう、更にはそれが私たち人間が感じる心地よさに繋がって、風景として残されていきますよう、精進していきたいと思います。

在籍中にお世話になったすべての方々に感謝、御礼申し上げて、これで最後とさせていただきます。

今まで本当にありがとうございました。


松下 智宏

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2021年1月31日 日曜日

現在進行中の高田荘の環境改善の様子

スタッフブログをご覧の皆様、こんにちは。
ご無沙汰しております、スタッフの松下です。

まだまだ寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
季節としては梅の花もほころび始め、春の兆しもうっすらと感じ取れる時季となりました。

こちらは今建築中の高田荘周りの植栽の様子です。




建築周辺の石場建て基礎、竹小舞下地・土壁施工はワークショップにて皆様と一緒に作業させていただいていますので、今回の投稿では割愛させていただきまして、それ以外でスタッフで進めている小仕事の様子を書かせていただきたいと思います。

この建物横の植栽は建前のワークショップ後の、昨年末に植えられたものです。

こちらも単純に木が植えられているわけではありません。



この土地の下部はこのようにコンクリート擁壁で土留してあるため、この土中の水が集まってくる土地の下流部のキワを堰き止めてしまうことにより、この土地全体の水と空気の流れが滞ってしまいます。

コンクリート擁壁を取り払って、石の空積みなどに施工し直すのがベストかもしれませんが、コンクリート擁壁なので容易くは取ることができません。

ですので今回はこの擁壁ありきでも、土地の水と空気が滞らずに
流れるように造作を施しました。

施工時に写真を撮り忘れてしまい、文章だけでイメージしづらく申し訳ありませんが、まず、木を植える前に、コンクリート擁壁際を深く溝掘りします。

そしてその溝の中には点々とダブルスコップで穴を掘ります。

その穴の底部はこのコンクリート擁壁の根元の立ち上がりよりも少し深いくらいです。

こうすることでコンクリート擁壁の根元よりも深い位置まで水と空気を送り込み、浸透させることでその下に水みちができるようにします。

また穴や溝を掘ることだけでも、その切り落とされた断面からは水や空気が抜けて、さらに集まってきます。

そうすることで、その穴や溝周りの水と空気・ガスを動かすという仕組みです。

少し暖かくなってきた時期に、少し深い穴を掘ると実感しやすいのですが、しばらくするとその穴の付近に小虫が涌いてきます。

これは穴を掘ったことによりその断面から土中の空気・ガスが抜け、
それに群がってくるのではないかと思います。


そこに竹炭を入れ、節を抜いて側面を割った竹筒を突っ込み、通気孔とします。

その周りに枝葉を縦に絡ませながら差し込みます。


こちらは別の現場で3年前に縦穴施工をし、今年になって再度その付近を掘削することがあったので、断面が露わになった縦穴の様子です。



掘削作業に伴って、竹筒は取り外されて少し分かりづらいですが、
樹木が水や養分を吸うための細根が土中深くまで誘導されていることが確認できます。

空気と土から出る適度な湿気がある状況下に枝葉を詰めることで、微生物により枝葉が分解される過程で、縦穴の深い位置までその菌糸が誘導されていきます。

その後を追うように樹木の細根が伸びていきます。


そして縦穴に枝が詰まったら、溝の縦穴と縦穴の間にもカナデコバールサイズの穴を点々と開け、ワラや枝などの有機物を差し溝底全体としても浸透しやすいようにしました。

そのひと手間を加えた上で溝に竹炭を敷き、薪になるぐらいの太い枝や様々な枝葉を絡ませながら差し入れていきます。

その溝処理を終えた状態がこのような側面です。



溝の枝葉は上の写真のように土がこぼれない高さまで少し立ち上げて土留としています。

この手前ももともとはブロック擁壁があったのですが、こちらは重機で取り払い、こちらからも土中の詰まりを取るためにやり替えます。

手前に見えている部分と、その反対側の溝の奥の部分は、溝の中の縦穴よりも深く穴を掘ることでこの敷地の土中の水が両側に向かって動き、ハケていくようにしています。



そして今回は、この溝部分はコンクリート擁壁ありきでやっていますので、溝の中に縦穴を掘っている部分には、擁壁の反対側からこのようにコアドリルを使い、穴を開けました。

これはただの排水という意味ではなく、縦穴を掘った底付近から外へ空気が流れるようにすることで、溝全体の中にも空気の流れが起こるようになり、それにより土中の水と空気を引っ張ってきやすくしたり、微生物の活動を活発にするためです。

今後このように植えられた木々の根が、地下深くまで伸びて健全に育つことで、樹木根によってこの土地の水と空気を地下から引っ張り上げ調整してくれることで、人にとっても居心地の良い環境になってくれることを期待します。



そしてこちらは先日の竹小舞・土壁ワークショップの後に行いました小屋上部の様子です。

段々畑になるという構想の元、造成が行われています。

もともとは昔の庭園によくあるツゲやマキなどの刈込樹形の木々があった土地です。

そこを一度伐採、抜根し、枝葉や根株は再利用するので取っておきます。

そしてなだらかな斜面をトラバースするように重機で道をつけていき、斜面上から造成していっています。



これは上部の斜面を段状に造成するために行った石積みです。

石積みというと語弊があり、正確には解体したブロックガラ積みです。

一見そうは見えませんが、先ほどの手前のブロック積みを解体した時に出たブロックの破片と、基礎のコンクリート片を積んだものです。

こちらも空積みですので、この背面にはブロックガラをハンマーで割って裏込め石として使いやすくしてから使用しています。

さらにその背面にも樹木根が絡んで将来的には木々の根っこでも支えてもらえるように裏込めガラの間にも、ワラや落ち葉などの有機物をすき間に詰めながら施工しています。

またそこそこの重量を下の土が支えることになりますので、下地には焼いた炭化杭を打ち込むことで重量が分散するのと、その杭が朽ちていく過程ですき間から水が浸み込むようになり、さらには菌糸を杭に纏わりつかすことで後追いで樹木根を誘導することを狙います。



こちらも別現場で1年ほど前に石積みの下に打ち込んだ炭化杭を掘り起こした際の写真ですが、打ち込んだ炭化杭に菌糸と樹木根が付着している様子です。

もう数カ月もすれば木々の根が密に絡んでいる状態になっていたかもしれません。



そして別の個所では、半円状の段々地形に造成して畑にしていきます。

これはそのための下地の溝処理の様子です。

ここには伐採時に出た枝葉を使って枝しがら壁が立ち上がる予定です。

そこも、その際の水の浸み込みや土中の空気の流れが要ですので、その際にちゃんと浸透していくように溝処理を行っています。



施工の要領は上記に書かせていただきましたコンクリート擁壁際のやり方と同じで溝を掘り、点々とその中に縦穴を掘って、さらにはその穴の間の溝部分には小さい穴を開け、先ほどの伐採枝を使って枝を絡ませ処理します。



完成するとこのような感じになりました。



半円、半円で段々畑が下りてくるイメージですね。

将来的にはこの枝葉は分解されてなくなりますが、畑の肩部分に植えられた木々の根がこの枝しがらと土の間に根を張り巡らし、根っこの力で土手を保護するようになります。

今回の施工はここまでですので、今後またここがどうなるかはまた高田荘でのワークショップのときにご覧になってください。

それではまだまだ寒い日が続きますが、体調にはくれぐれも気を付けてお過ごしください。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2020年4月26日 日曜日

今だからこそ

ご無沙汰しております。高田造園の松下です。
世間ではコロナウイルスの拡がりとともに、
経済はもとより私たちの生活様式、生活基盤に大きな影響を及ぼし、
時代として大きな転換期を迎えています。

コロナウィルスにより大変な思いをされている方が
日本中、世界中にいらっしゃり、
我が身も人ごとでない昨今の状況。

その中で自分はどうしていくべきなのか
しっかりと考えなければといけないと感じながら
日々を送っています。

私たちは自然に根差した生活、自然に寄り添った生活を目指し、
施工においてもその場の自然環境を木の力も使いながら、
本来あったその土地の地力に満ちた、
そして住まう私たちにも心地よいと感じられる
相利共生可能な空間、環境作りを目指して仕事しています。



そういう中で、ものを考え仕事をしていると、
時代は人類に、自然に寄り添う生活に方向性を見直さねばならないと
転換の必要性を示してきているのではないかと
最近より感じるようになりました。

私もイベントでの体験を通して、
味噌をここ2年ほど自分で作るようになりました。

今まで普通に暮らす中ではスーパーで買うのが当たり前だった味噌も、
ついこの間までの日本人の生活では自分たちで作るのが当たり前だったものです。

日本人は麹菌をうまく生活の中に取り入れ、
発酵を利用して生活の中で様々な物にうまく活用してきました。



食ベ物も自然の恵み、収穫に感謝し、
自分達が食べるのに必要な物を程々の量で生産・収穫し、
多く獲れたものは周りの人たちと分け合ったり、
発酵食として保存して備蓄してきました。

機械や農薬がない分、自然にインパクトを与え過ぎずに、
自分たちの住む周りの環境を傷めつけずに、
自然の中で「足るを知り」生活していました。

その生活が結果的に自分たちの住む周りの土地環境にも、
発酵食品や農産物などを食べることによって形成される自らの腸内環境にも、自然と程よいバランスで健康に生活して来れたのかもしれません。

しかし、今は食べる物にしても、自分たちの住む周りの環境にしても、
一昔前とはすっかりと異なり、
大量に収穫を確保するためにほぼ肥料と農薬づけになった野菜や穀物類を口にし、
住まう場所も、もともと河川災害の被りやすい地域であったり、
山を削り一様に均し宅地化した場所であったりと、
先祖のように土地の履歴や、地形を読んだりして、
家を建てるべき場所を選ぶといったことが今ではほぼなくなってしまっています。

そういうことに対して地球は、自然は、
人類にそろそろ目を醒ますようきつい仕打ちをしているのかもしれない、そう思ってしまいます。

どなたかが言ってらっしゃった言葉ですが、
自然は残酷で、
時に私たち人間に四季折々の景色を見せてくれたりもしますが、
時に災害級の被害を及ぼしたりもします。

しかし、「自然は美しい反面、時に恐ろしい」と解釈するのは私たちで、
自然というのはもともと中立で、
起きたことに後から私たちが意味付をしているだけなのだと。

今世界では「戦時」「有事」とも言われる現在ですが、
それに匹敵するほどの安全衛生面、経済面の緊急事態で、
人類が一致協力して、まずはウイルス感染拡大を最小限に抑えていく姿勢です。

世界として日本としてはそういう態勢ですが、個人レベルで言うと、病気になってしまえば受け入れ、ワクチンが開発されるまでは自分自身の免疫力、体力に頼る他ありません。

もうすでにウイルスが出現してしまっている以上、いつか被害を及ぼさないレベルになるにしても、共に生きていく覚悟で臨んでいくしかありません。

感染の拡がりを抑え、大切な人の命を守るためにも、今は外での行動を少し抑えることが必要であると考えますが、この波が去って行った後に、その後の世界でどう生きていくか。

それは各々がそれぞれ考えていかないといけないことです。

もしかするとその後に自然災害が追い打ちをかけてくるかもしれません。
そういった心の備えも必要になるかもしれません。



新型コロナウイルスに限ったことではありませんが、
自己防衛策として、少しでも自分自身の免疫力を上げるためには、
普段から食べる物には気を配り、
日本人が大切にしてきた発酵食品や玄米、
そういうものを取り入れた食生活を見直して、徐々に取り戻していく。

またスーパーなどでも食物を購入する際は、
その品物がどのような場所で、どういった方法で作られたのか調べてから購入を検討してみる。

その行き着く究極のところ、安心安全な物を食べるためには、
自分で作ったものを食べるのが一番ですが、
それが実現不可能な方でも、
忙しさの中で見過ごしがちな、
自分の体にもう一度気を配るといった、
今だからこそ見直せることがあるかもしれません。

また、災害級の大雨も降る昨今。
そういう状況下で、どういう場所に大きな被害が出ているのか。
どのような場所が危険にさらされるのか。
もう一度自分たちの生活の中で身の回りを観察し、
再認識しないといけない時期も来ています。

今私たちは、様々な災害の重なる現状を、
私たちの命、体、基礎的な衣食住、その原点をもう一度省みる機会として与えられている気がします。

「神は乗り越えられない試練は与えない」
池江璃花子さんやYOSHIKIさんも信念にされているこの真理を胸に、
今は耐え、乗り越えていくしかありません。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2019年7月29日 月曜日

梅雨寒から一転猛暑の今日この頃。



関東では例年よりも一週間以上梅雨明けが遅れ、
梅雨明け宣言前にすでに夏の暑さで汗が吹き出る気候の中。

皆様はどうお過ごしでしょうか。

先日までの仙台出張明けの代休を利用ししばらくご無沙汰しておりました
ブログを執筆しております。



こちらは仙台のお施主様宅で、まず行いました敷地際の
通気浸透を改善する作業の後です。

現場は小高い丘陵地の住宅地に建っており、
海側を見ると一望できるような好立地にあります。

ですがその擁壁を施工する際には、
下地に再生砕石で締固められているため、
表層の雨水が浸透しにくい状況です。

まず家周りに植栽を施す前にその擁壁際を溝掘りし、
点々と縦穴を穿っていき、有機物を絡ませ処理を施した後に
土を埋め戻していきました。

こうすることで土地の水や空気が擁壁際で滞ることなく、
擁壁際で下に浸透していき、枝葉が分解していく過程で
土中に菌糸を誘導し、擁壁際に植えた樹木の細根や菌根と
リンクするときネットワークで覆われ、
土地の微生物環境とともに、樹木がより良く成長していきます。

今は苗木レベルの樹木たちも根だけでなく、
土中の微生物のネットワークが整うと、
土の中の細かい水分や養分にも手が届くようになり、
それにともない細根も発達していきます。

細根が発達すると樹木上部も比例して成長し、
枝葉を暴れさせずバランスよく茂らせていきます。

一般的には樹木の細根自体が水分や養分を吸い上げると
思われているかもしれませんが、
その先には根っこと共生する菌や、土中で生息する菌がいて
その微生物たち経由で細根に供給される水分や養分の方が
量としても比較にならないほど多いのです。



擁壁際の水脈浸透処理の後に植栽をする場所には
樹木がそこで下に根を張りやすくするよう、
下地を耕しながら竹炭、籾殻薫炭を混ぜ合わせます。

また下地の中にも縦穴を穿ち竹炭を埋め、炭柱とします。

その上に稲わらと炭をまき、敷葉工法で土をかぶせ
その上に樹木の鉢を置いた状態です。

高田造園では植栽といえども一般的に行う、
穴を掘って樹木の鉢を入れて埋め戻すのではなく、
下地を撹拌しその上に樹木の鉢を置いて土を覆土する方法です。

「植木鉢を地面に置いておいたら気づいたら下の水抜き穴から
 根っこが出て地面に根を張って取れなくなっていた。

 それを放っておいたらさらにどんどん
 木として成長してしまった。」

そういう経験をされた方も多いのではないかと思います。

樹木は下地に根を張れば、後は菌との共生の中で
水と空気を求め根も発達していきます。

また地面よりも高い位置に植えることになるので
表層に水や空気が滞ることもありません。

埋め戻す土は客土する黒土だけではなく、
現場にもともとあった溝掘りして出た土を半々ぐらいに混ぜ合わせ、
さらに菌が絡みやすいよう薫炭を配合します。

あくまで現場で出た土は運び出さず、
その土地の情報としてその土地に還す。

擁壁際での水脈整備作業においても、
現場にもともと主のように鎮座しているカシの剪定枝を
混ぜ合わせています。

その場のものはできるだけ持ち出さず、
その場の情報として還す。

これは高田造園のポリシーの一つです。

全部が全部100%そうするのは不可能かもしれませんが
造園という仕事は、工夫次第で循環型で仕事をしていける
業種の一つです。

リユースとしてゴミとして扱わないことで
処分するものを増やさない。

またその土地の情報として還元する。

自分の感覚の中にもこの感覚が染み込んでいくよう
修行期間中には繰り返し思い起こそうと思います。

今回は写真をゆっくり撮れる余裕がなく
実際の写真が少なく申し訳ありませんが、
その後、二日目の作業で覆土し、植栽マウンドの周りにも
縦穴、溝堀を施し有機物処理を施し、
先週の仙台の仕事を終え戻ってまいりました。

また今週後半にお伺いするまで体力を回復させつつ、
千葉での手入れでお待たせしておりますお客様宅にも
お伺いさせていただきます。

寒いぐらいの涼しい梅雨が一転、
酷暑猛暑と予想されそうな夏がもう直、到来しそうです。

皆様、体調管理には十分に留意され、お過ごしくださいませ。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | 記事URL

2019年3月31日 日曜日

土気山での休日時間。

東京では観測地点で桜が早くも満開となり、
近くでは鶯も鳴き始め、春の気配が感じられ出した今日この頃。
皆様はどうお過ごしでしょうか。



先日土気山ダーチャフィールドでは、皆様をお招きして
恒例行事となりました味噌仕込みを行いました。

今年は例年にも増して大豆20キロ分の味噌を仕込み、
すべてを杉樽にて仕込みを行いました。

昨年の仕込みは岩富ダーチャにて、
木桶とプラ樽の2通りで行いましたが、
やはり天然素材である木の通気や、
長年住み着いている菌の作用による違いなのでしょうか、
プラ樽で仕込んだ方は若干の酸っぱさを感じ、
同時期同じ場所で保管していたにも関わらず、
杉樽の方は酸っぱさなどはなく、
出汁なしでも味噌汁が美味しくいただける
お味噌に仕上がっていました。

そこで今回はプラ樽は使用せずすべてを杉樽で行いました。

イベントには多くの方にお集まりいただき、
久しぶりに行われた土気山のイベントも
暖かく和気あいあいとした雰囲気に包まれました。



今回はいつもにも増して多くの大豆を煮込んだり、
お昼のお米を炊き込んだり、
さらには料理の支度にも火が必要なため、
あらゆる場所で竈がフル稼働という状態で
進められていきました。

スタッフとしてご参加いただいた女性の方々にも
ご尽力いただき手際よく準備が進みました。


そして、今回はもう一つ、
長年愛されてきた茅葺きのバイオトイレが
建て替えられるという運びとなり、
使いやすさの面を考慮して
パブリックスペースから少し離れた奥へ
移設されることとなりました。



新設される場所は以前親方が小屋を立てようと
斜面際に石積みを行った場所であり、
石積みにより段差が維持され
高低差が生じた状態で長年維持され、
段丘状になっていることから、
そこの土地の土中環境としては水や空気が動いていて
素掘り穴のトイレの場所としても以前の場所よりも
微生物が活発に働きやすい場所と言えます。




茅が皆様の手によってはらりと剥ぎ取られ、
トイレは骨格だけとなりました。



私はこのトイレが出来た当初はまだおりませんでしたので
改めて見ますとこんな感じになっていたのかと
剪定した枝も使い方次第で活きてくるものだと実感させられます。

このあと解体された茅は畑をマルチングする材料として、
太枝は分解して施工時でもよく行われる枝葉のしがら組へと
使われていきます。

その場で役目を終えても自然材料であれば
造園の仕事においてはいくらでも使い回すことができ、
最後には土に、地球に還っていく。

地球上で私たちが生活の中で使っていくものは
できる限りこのように使い回し利用、循環させていくのが理想で、
先人たちが今までやってこられたことです。

科学技術の発展で便利なものは今の時代に溢れていますが、
プラスチックが世界各国で溢れて汚染されている状況で、
私たちがもう一度見直すべきはこのような自然素材、
地球に還っていくことのできる材料をいかに現代人の生活に
再び浸透させていくかだと感じます。

そして解体されたあとの骨組みのあとには、
素掘りの穴が出てきます。

踏み板を外し、皆様で中を汲み取りましたが、
全然嫌な臭いがありませんでした。

改めて微生物や炭の力の凄さに感心させられます。



また素掘りの穴の側面には菌糸が付着し白くなっている様子が
見受けられます。

施工時は直角にまっすぐ切り落とされているはずの穴が
今回くみ取りを行った時は下側がえぐれて丸くなっていました。

溜まった炭や有機物により、微生物が作用し
土の側面にも菌糸が張り巡らされ、土が柔らかくなり、
下部がえぐれていったのかもしれません。

そして今回は小さな虫が少なくあまり出てきませんでしたが、
実は一年半前にも仕事の中でこの場所の汲み取りを行っており、

その時も嫌な臭いは全然しなかったのですが、
さらにその時は汲み出した炭の中は、
ダンゴムシや見た目、直感で良さそうな小さな虫の住処となっていて
そこには新たなコロニーが誕生している、
そのような状態でした。

その時はひとりで汲み取りを行っていましたが、
トイレの汲み取りを行いながら一人それをまじまじと眺めながら
感動にも似た感情でその小さな虫たちの生活を見守るという、
傍から見ると少し危ない人(笑)だったと思います。

しかし、それぐらい興味深く惹きつけられる虫たちの住処として
成り立っていたのでした。

それから一年半が経ち、人間と同じく、
その場所の環境も何らかの変化が有り、
前にいた虫たちも引っ越していったのかもしれません。

このような今までには出会うことのなかった些細な自然の変化にも
少しずつですが目が向くようになり、
自分の意識も変化してきているように思います。



そして、作業は着々と進み、新たな場所で木材で骨組みができ、
その下には新たな素掘り穴が掘られ、その穴の中にはさらに
ダブルスコップで掘れる大きさの深さ5.60cmの縦穴を掘り、
竹炭を入れ、いつもながらの竹筒通気口を差し込んだ
枝つめを行いその穴の中でより分解が行われやすいよう
処置を施しました。

さらにその素掘り穴には炭を敷き均しました。

そして今後は用を足すごとに炭やウッドチップ、籾殻などを
撒いて蓄積してもらうことで
今回のように臭いの発生しないトイレとなっていきます。

今回はスタッフとしてなかなか忙しかったので、
トイレの施工の様子や、味噌仕込みの経過の様子を
写真に収めることができず
ご報告がここまでとなり申し訳ありません。



その代わりと言ってはなんですが、
私個人として先日土気のフィールドをお借りして
自分で同じく味噌を仕込んでみましたのでその様子を
少し載せてみたいと思います。

まずは炊事小屋の時計ストーブに羽釜をセットし、
前日から水に浸していた大豆を気長にコトコト4時間半ほど
煮込みました。

ガス火と違い、薪は火の調節が難しく
羽釜の真下に火元があるとすぐに温度が上がってしまい
何度も吹きこぼしました。

昔の人たちはこのような調理にも経験を通して
扱いを心得ておられたのでしょうか。

煮込み終わった大豆は潰す工程へと入っていきますが、
先日のイベントでは木臼と杵で潰しましたが、
今回は量もそれほど多くなかったのでビニール袋に入れて
手で潰していきました。



次に買ってきた生麹をボウルにあけ
塩を入れ混ぜ合わせました。



そこへ潰した大豆をいれ混ぜ合わせます。



途中で大豆の煮汁も混ぜ合わせ
耳たぶの柔らかさになるまで捏ねました。



終盤にもなると最初の色合いとも異なり、
すでに味噌感の漂う感じになってきました。

それを今度は団子状に丸め、樽へと投げつけます。



投げつけるのは隙間に空気が入らないようにするためです。



そして一段ごとに手で隙間を埋め樽に密着させます。



そして最後の団子を押して一体化させ、
上に塩をまぶし、ラップをかけ(和紙が手に入ればよかったのですが)
落し蓋をし、重し石を乗せ、以前仕込んだ皆さんの味噌と
一緒に置かせてもらいました。




そして仕込みが終わったあとはのんびりと
持参したコーヒーを薪で沸かしたお湯で淹れてみました。



普段の賑わいのある土気や
仕事の時の慌ただしく動くときの土気とは違い、
しんみりとした土気の炊事小屋でいただくコーヒーは
何とも言えない落ち着きのあるものでした。

ふと外を眺めると先日完成した新たなトイレが
これからの新たな風を感じさせてくれるのでした。







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