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2015年8月12日 水曜日

涼を求めて

 ブログをお楽しみの皆様こんにちは。
夏の暑さもピークを過ぎたと思いたい今日この頃、皆様は夏をいかがおすごしでしょうか。

海に山に川、涼しさを求め、自然に足を運ばれる方も多いのではないでしょうか。

私も涼しさを求め出かけにいった中の一人なのですが、今回の連休では勉強も兼ねて日光の方まで足を運んできました。

 訪れた場所は東照宮、二荒山神社、輪王寺、古峰神社等を御朱印帳を持って巡るという観光ではありましたが、今年に入って400年という歴史を刻む東照宮を支える周りの環境はどんなものなのか、また先人の知恵が活用されているのかという個人的な興味を持って日光の街を散策してきました。


ここは東照宮の表参道を並行する裏路地です。
山を切り開いた際の園路造成の土留めとして石積みが多く残されていて昔ながらのセメントを使わない工法である空積みによって積まれている為、石と石の間には隙間が有ります。
通気性や通水性が良い為、自然と石の隙間からは植物や苔等が乗り人の生活空間の中でうまく植物が溶け込んでいるようでした。


中でも面白かったのが空積みの中に実生が落ちたのか年数が経ち今やカラ積みの土留めを根っこで支える様子です。
無機質な石積みを有機的な空間に変えるだけで無く、その環境が周りの空気を冷やしていた。

このような通気と通水性を遮断しない通路が多い事や長い時間いじられていなかった為か表参道へ至る通路沿いに生えている杉やヒノキ等は皆、御神木と呼べるようなサイズの木々達でした。


所々見られる木々の間のギャップには浸食が始まっていて


フサザクラやケヤキ等の実生が所狭しと競い合い、コンクリートを徐々に割って行く様子が見られました。



元々街中でも水が涌く環境の為なのか水脈が浅い為なのか、至る所に浸食が見られ足元から涼しくなる様な空気はなんとも心地よいものでした。


昔夏の夕方に温められた地面を湿らせ周りの空気を冷やす目的で行われていた打ち水の効果でしょうか、
湧き出た水は冷たく周りの水路の外も潤し周辺の環境も冷やしていました。



山を下り流れ出た絞り水は黒川へと流れます、中禅寺湖周辺から絞り出た水脈が集まり川となり、肉眼では川底の砂利まで確認できるような透明度の高さで、真夏のこの時期でありながら触れれば1分も浸かっていられないような冷たさにこの日光の土地の自然の豊かさに改めて感動しました。

日光の街中を潤すこの流れは街中の至る所で水が湧き出て生活に利用されていました。
道中湧き出た水を飲む人も多く東照宮に向かうにつれて冷たくなる水を私も見つける度に利用していました。



また、世界遺産である日光では外国人観光客が多く水がただで飲める事に皆驚くそうです。その為か所々で外国人が集まり、水を飲み比べているようでした。
資源を大切に守ってきたからこそ利用できる資源、水という当たり前の資源を守ることの大切さを今後も続けていかなければと思いました。














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2015年8月 8日 土曜日

真夏の庭園めぐり

高田造園スタッフブログをご覧いただいている皆様、ご無沙汰しております。入社しまして早くも五か月が過ぎました、石井です。
あれほど不安定な梅雨の面影はどこへやら、夕立すら来ない摂氏三十度代後半が毎日のように続いているようです。毎年々々、天気予報で「例年以上の・・」という言葉が聞かれるのは気のせいでしょうか(温度然り、スギ花粉然り・・?)

さて、前回のブログでは、私が休日に拝見しました親方のお庭を紹介させていただきました。そこで今回も、その後訪れた庭園の紹介をさせていただこうと思います。仕事の合間を縫って造園空間を拝見することや、その拝見した造園空間を回想しながら関連文献なども参考、確認して文字におこすことは、書いている私自身も大変勉強になりますので、私のブログでは造園空間の紹介が主となるかもしれません。
その情報が、ご覧いただいている皆様のお役にも立てれば幸いです。

それではまず、東京都は世田谷、二子玉川公園内にあります「帰真園」です。



開園は2013年、面積は約1760坪。入場料は無料。作庭は、近代造園史に名を残す中島健の元で修業をされ代表作「田園調布四季の庭」では造園学会賞を受賞されました高崎設計室有限会社代表の高崎康隆氏。設計業務には、世界規模でランドスケープを創出している株式会社戸田芳樹風景計画、監修は紫綬褒章も受賞されています造園界のオピニオンリーダ、進士五十八氏が務められています。
庭園名には、リターントゥネイチャー、自然に感謝し、自然に帰る。そのような精神が込められています。

この庭園の特徴を端的に表すと、「ユニバーサルデザインと多摩川の縮景を主題とした、現代の公共的日本庭園」といったところでしょうか。

多摩川や国分寺崖線沿いに豊かな自然、文化遺産を有しつつも商業施設などの開発が盛んな二子玉川において、本庭園は環境、教育、福祉に強く貢献することを念頭に置かれ作庭計画が進められました。そのため飛び石や石段等、ユニバーサルデザインの基準には程遠い回遊路のイメージが強い「日本庭園」というデザインの要素ですが、本庭園では車椅子の方でも回遊できるよう緩やかかつ平坦な回遊路を主動線として設けています。それを現代の生活様式における「日本庭園」の特徴とするねらいがあるようです。前回紹介させていただいたホスピスの庭とも通ずる部分があります。


車いすの方でも利用できる茶室、万人席


車いすの方でも利用できる高さの蹲踞。前回の投稿と通じる部分があります


多摩の源流をイメージした滝口。右奥の通路は車いすの方用の視点場


土塁と平坦でのびやかな園路


園内に移築された文化財、旧清水邸書院

しかし気になったのは、樹木の威勢がとても弱弱しいということです。枝枯れを繰り返し棒状に近い姿の雑木が多く見受けられました。恐らく白色系の園路舗装による強烈な照り返しが引き起こす幹の乾燥が原因かと思われます。常緑性の低木などを植栽すれば中高木も楽になるとは思うのですが・・。過酷な都市環境に樹木を植えるときには、様々な事に気をつけねばなりません・・。



次は、静岡出張の際に訪れることのできた、龍潭寺と摩訶耶寺です。

龍潭寺は、臨済宗妙心寺派で733年に行基が開創、もとは八幡山地蔵寺と称されていたようです。井伊家初代の時、その菩提寺となっています。また昭和11年に国の名勝に指定されており、庭園は江戸時代前期の作庭とされています。小堀遠州が作庭に関与したのではと推測される多くのうちの一つですが、本堂建立の30年前に遠州が没していること、庭園の手法が遠州没後の時代を強く反映した手法であること(観賞式でありながら回遊施設の点在、芝生築山の連山、細長い流れと建造物間の狭さ、実際の水面と枯滝の併用等)から、その説の信頼性には賛否あるようです。

三尊石や枯滝、鶴亀の石組やサツキの刈込など、当時形定化された寺院庭園の様式を忠実に伝承する本庭園はとても貴重であるといえます。


全景。しっかりとそれぞれの役石が明確に残っています。


あまり注目されることない石庭。



摩訶耶寺は、高野山真言宗ですがこちらも行基が開創とされています。(726年)奈良時代から今日まで数々の兵火、天災から守られており、厄除けの寺としても高名です。文化財に指定された不動明王像、千手観音像、阿弥陀如来像などを有しています。寺の名の由来は梵語のマカヤーナの音写で、優れた教えを意味しています。

庭園が発見されたのは昭和32年と新しく、竹林清掃中に発見されました。そして後昭和42年に日本庭園研究会と京都林泉教会の合同調査によって発掘復元されたものです。作庭年代を証明する文献的証拠は発見されていませんが、石組や地割の構成から、京都林泉教会の重森三玲は平安末期、日本庭園研究会の古河功は鎌倉初期と推定したようです。しかし近年では江戸時代の作庭ではという説も。しかしながら平安末期あるいは鎌倉初期付近の庭園であれば、その時代の庭園は京都や奈良、奥州平泉以外の地域にはほとんど存在しませんので、かなり貴重な庭園遺構であるといえます。私は大学生時代、庭園遺構の池底や護岸の構造について卒論を書いていたのですが、本庭園の報告書に記されていた池底に粘土と砂を(交互に?)敷設するという工法は平安時代に数件見られた工法でもありますので、その部分だけみると重森の推察と重なるところがあります。
当時の植栽を推定、復元することが難しいため、石組と地割が強く印象に残るところは、発掘庭園特有の特徴といえそうです。


石組全景


門のどっしりとした佇まい



しかしながら、今夏は本当に暑いですね。ここ数年、人々が心の底で「異常気象」という四文字を意識せざるを得ない、そんな時代なのではないでしょうか。手入れや作庭にて雑木の作ってくれる涼しげな木陰を見るたび、やはりこのような現代において人と自然の生活環境を救えるのは、造園という職能をおいて他にはない、そのような気持ちで仕事に臨んでおります。

これからお盆休みをいただきますが、折角の連休、家庭の用事のみならず造園的に有意義な連休にしたいと思います。

工事などお待ちいただいているお客様、ありがとうございます。このような機会で養った経験をお客様のお庭にも還元できるよう精進いたしますので、しばしのお時間お待ちくださいませ・・
またこの時期お一人でお仕事されている(特に外仕事である同業者の)方々、くれぐれも熱中症にはお気を付けください。現場にてお一人で倒れてしまったら、気づいてくれる方もいませんので・・。室内でも熱中症にかかる方は多いと聞きます。

しかしこの猛暑だからこそ、木々が作る木陰のありがたさが身に染みてわかる時期でもありますね。ですがこの雨の降らない今夏、その樹木たちも水がほしいといっていることも多いと思います。庭木や鉢物がそのように語りかけてきたら、頑張っている樹木に一服させてあげてください。

次回は連休中に体験、拝見した事柄を書かせていただきたいと思っています。
重ね重ねになりますが、くれぐれも体調にお気をつけてお過ごしください。

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