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2015年9月28日 月曜日

小屋づくりワークショップご報告

たわわに実った黄金色の田んぼに赤い彼岸花、そこに金木犀のやさしい香りが感じられたのなら季節はもう秋です
秋の虫たちがあちこちで歌い、空を見上げれば鱗雲や鰯雲が天高く浮かび、中秋の名月の名のごとく昨夜は見事な月に魅せられました

あちこちで、新米の看板が見受けられ、豊作を祝いおはぎをいただいたりと、季節の変わり目は前の季節やご先祖様たちへ感謝する日本独特の美しい風習に触れることができます

高田造園の土気ダーチャでは13日、22日と開かれた小屋づくりワークショップに子供から大人まで大勢の皆さんに参加していただき、こちらも実り多い、充実した日となりました

今回は千葉の木材を使ったOM(夏冬は地熱を利用した室温調整、屋根の熱を利用した急騰..もしろい!ったいない!の略)付きの小屋を大工さんのご指導、ちば山理事の設計をもとに基礎からたちあげていきました

地熱利用のため床下には蓄熱層が必要となります。そのため現代の建築工法ではコンクリートを基礎に打ちますが、今回森の中での小屋づくりは自然へのダメージを最小限に抑えるため、焼いた松杭に瓦を二重に立てその中に藁を敷き詰め、そこに竹を張り泥を塗り基礎(外との断熱、蓄熱層を形成)を立ち上げました



地熱利用のため今回は土中に管を這わせ立ち上げておきます
土の中は一年通して約18度と一定なため夏にはひんやり冷気を冬にはほんのり暖か?暖気を部屋へと送ります



そして13日上棟の日当日...



大工さんたちが土壁基礎に土台を乗せてゆきます



根太の上に床板を張ります(少しずつ人が集まり柱建て、落とし壁と並行作業)



高田造園のお施主様も参加してくださいました
(ん~それにしても馴れた手つきです...)

落とし壁工法のため壁にはビスは使わず、壁板を落としていきます



梁を組むとがっちり!一体化してきました



子供たちも興味津々

「ここにいる大人はみんな大工さんなの?」
楽しく作業する大人たちの姿は子供たちには大工さんに見えたようです...

道具への興味、部材への純粋な疑問、子供たちの泉のような好奇心や探求心
親方も楽しそうに答えていきます



床下をのぞき込み管を発見!

「これはなあに?」
「土の中の心地よい空気を部屋に引き込むの、夏が涼しくなるよ!」
「そうなんだ!!」
自然エネルギーは子供達でもすんなりと理解できる簡単な仕組みです
普段の遊びから、土がひんやりしていることを知っていたようです



13日、一日で土台から屋根までアッという間に建てられました
お越しくださいました皆様ありがとうございました




そして22日は壁塗り大会
土と藁と水を混ぜて竹の張られた壁にみんなでべたべた



この日は子供たちが大活躍
泥だらけになっても夢中で続けます



午後になっても作業は続き
大人も子供も一緒にぺたぺた、ぬりぬり




作業の合間



途中自然栽培畑で落花生の収穫...
子供たちもいろいろな発見をします
草むらを歩けば虫がピョンピョコ跳ね回り、雑草の中から落花生の丸い葉を見つけたり
(落花生って不思議、根っこについてないの)

自然な地形の道だから、穴にはまったり、転がったり




穴にはっまても笑っちゃう、土を歩くって気持ちいいし、楽しいっ!




泥だらけになった子供たちは五右衛門風呂へ
薪でたいたお風呂は気持ちが良く、しばらく大渋滞...
ボタン一つでお湯はりできるお風呂では味わえない水温の変化を楽しめます
「まだ冷た~い!」
の言葉に「はいはーい、薪をくべるよ~!」
昔の生活会話にきっとこんなやり取りがあったのだろうなと笑みがこぼれます

山小屋や自然栽培畑、去年から始めたダーチャ活動
この地に来る方皆が自然を感じ、考えるフィールドにしたいと願ってまいりました

そんな中今年に入りこの地を通して、本当にたくさんの人々と出会うことができました
それぞれがいろいろなものを抱え、自然と会話しながら明日のために生きる方々です

様々な出会いを通して私たち高田造園従業員一同もそのたびに得るものが多く、皆様から学ばせていただいております
本当に本当にありがとうございます

『縁を繋ぐ場』

近いようで遠い現代の人と人、人と自然の繋がり...
架け橋となってくれているもの
大人の中にもある、子供たちの純粋な精神
そしてその精神に触れるもの

お越し下さった皆さまそれぞれがいろいろを感じられる、かけがえのない場になっていたら幸いです
ダーチャ構想の中でたくさんの想いを詰め込んだこの土地は今まさに現実のものになろうとしています
移りゆく季節に刻々と成長し、語りかけてくれる風景


気持ちの良い秋風が金木犀の香りで満たされるように、嬉しさと感謝の気持ちが溢れます






















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2015年9月18日 金曜日

夏の収穫

高田造園ブログをご覧の皆さま、いつもありがとうございます。ご無沙汰しております石井です。


前回の更新から随分日にちが空いてしまいました。本日は、酷暑を思い出させてしまう真夏の時期にまで遡ってしまうことになりますが、前回の更新の直後頂きましたお盆の連休の「造園的収穫」について書き連ねたいと思います。


まずはお盆休み序盤、八月八日に、雑誌「庭」主催のシンポジウムに参加しました。本誌をお読みの方はご存知と思いますが、読者と掲載された庭師、そして異業種の方の交流を目的としたシンポジウムが2015年春号から発刊のタイミングで定期的に開催されており、今回行われるのは三回目となります。初回に池袋で行われたシンポジウムに参加しレポートとしてまとめた原稿を2015年夏号に掲載させていただいたご縁もあったため、関東近辺で行われた場合には出来得る限り参加したいシンポジウムのひとつでもあります。(二回目と、次回の四回目の会場は梅田のようです)



今回のシンポジウムのテーマは「造園家とランドスケープアーキテクトの仕事の領域」。登壇者は、庭誌への掲載も多く写真集「水の庭の精神」(建築資料研究社、2014年5月発行)も著されたご存知水景のスペシャリスト、株式会社大北美松園の大北望氏と、同分野の造園とはいえ対象とするスケールが一回り大きい職能であるランドスケープ設計分野の大手、株式会社ランドスケープデザインの佐藤宏光氏。お二人が協力して施工した現場を主題に、過去のお仕事なども伺い、それらの話題に対して質疑応答で振り返る形で、シンポジウムは進められました。お二人の和やかな対談や現場施工時の様子から、お互いにリスペクトしあい、同じ目的意識のもと対等な立場でプロジェクトを進められてきた経緯がひしひしと感じられます。(戸田芳樹先生の途中参加には驚きましたが。。)

水を用いた庭が大好きで、またランドスケープデザイン的な分野も大学で学んでいた私にとってはお二人の登壇、対談は本当に願ってもないような事で、大北氏の水景の技法やその細部の写真や佐藤氏のスケール感、空間の捉え方など技術的、経験的なお話は大変勉強になりました。しかし本シンポジウムで最も心に響いたのは、テーマにも通じる、佐藤氏の「自分の手でものを造っている人の言葉は説得力が違う。設計者には限界がある」ということばでした。主に自然材料を用いることが多く何よりも「自然とは何か」を追求し自分の手でものづくりにあたっている造園職人からすれば、現代の建築(設計)主導の風潮の中でこのような考え方を持って公共的外空間を設計管理している方が業界の第一線に居て頂けるということは大変に嬉しい事であろうと思いますし、それによりニワの未来の希望がどれだけ広がることでしょうか。長々とした質疑にもお二人とも快く答えていただき、その後の懇親会も参加して、大変に有意義な経験をさせていただきました。

本誌が主催するシンポジウムは庭公式ホームページ(http://niwamag.net/)などでも情報を得られますし、どなたでも応募できますので、興味のある方はぜひご参加ください。


そしてその日の夜の懇親会の後、竹芝から夜行の客船に乗り、伊豆諸島は神津島へ一泊の旅行に向かいました。

神津島は、伊豆諸島の有人島としては最西端にある島で、瓢箪のような形をした面積約18.5㎢の島になります。
海水浴やダイビングが楽しめるきれいな海や海岸があるほか、島の中央に位置する天上山(標高は600m程)は、山頂に天然の池や白い砂漠を有し、四季折々の花も楽しめるため、花の百名山、新日本百名山にも選ばれています。岩場に設けられた飛び込みもできる大きな歩道、赤崎遊歩道というところもあります。



やはり造園家見習いとしては、山の植生や面白さの方が気になってしまうものです。時間もあまりとれなそうですが早速天上山へ。遠目からみると、標高の割に広いスケール感を感じさせる地形な気がします。緑が多い尽くしているところが山道のようなので、少し安心します。なんせ真夏の晴れの日です。と思いきや。



樹木が低いんです。耐潮性のあるシダや、マツやシャリンバイ、トベラなどの植生ですが、おそらく潮風と土壌の影響で、背丈以上の物がありません。ひざ下です。確かにこんなところですから当然といえば当然です未熟でした。日光が直射です。買ったアクエリアスがみるみる減っていきます。

時間とアクエリアスの許す限りまで登りましたが、山頂にはたどり着けませんでした。それでも近くの海と少ない市街を見下ろす六合目からの眺めは絶景の一言でした。それにしてもやはり、夏に低山を登るのはよくないようです・・



その次の日は海水浴へ。とにかく綺麗です!海に面した自然の地形や山、浜が貴重に感じられるのは(元)東京民の若者の悲しき宿命なんでしょうか。そして帰りは行きと異なるジェット船で、数時間で帰れました。



短い時間でしたが、海や山、そしておいしいお魚などを存分に満喫することができました。アクセスもいいですし、皆様も、山なら春秋に、海なら夏に、神津島、訪れてみてください。


また、この連休中には自然を楽しむ旅行をするほか、使ってみたい、手に入り辛い道具を買い揃えることも目標のひとつでした。まずは地元の金物屋さんで丸太などをはつる、殴る道具「ちょうな」を。そして、京都に石道具を買いに行きました。



訪れたのは石道具好きの方ならご存知坪田金物さんです。私は親方に教えてもらい初めての訪問でした。
鋏などの他、左官道具や石道具の品揃えが豊富で、石道具はとても頑丈につくられているそうです。
整地等に用いる地ゴテも坪田さんのものは丈夫かつバランスが良いと聞きます。
東京もので石道具初心者の私にも色々と道具の話をしてくださり、大変勉強になりました。
購入したものは、目地ゴテ3種、セットウ3種、石ノミ3種、コヤスケ、鉄平トンカチ等。ビシャン以外のひとまずの石道具一式を揃えさせていただきました。今は柄をつけている最中で、早く使ってみたいものです。



京都にお越しの庭師の方、石道具をお探しの方はぜひ。


そしてせっかく京都に来たからには、やはり造園的なものも見なければなりません。今回は、下鴨神社に訪れました。
下鴨神社は、平安時代以前から存在する京都で最も古い神社のひとつで、世界文化遺産にも登録されています。上賀茂神社の祭神である賀茂別雷神の母の玉依媛命とその父の賀茂建角身命を祀ることから、正しくは賀茂御祖神社といい、江戸末期造替された東本殿と西本殿は国宝に指定されているほか、多くの社殿が重要文化財に指定されています。



そして、東京ドームの三倍にも及ぶ面積を誇る境内の自然林は糺の森と呼ばれ、平安京以前の原生林を残す貴重な森林として国の史跡に指定されています。神社を見に来たというよりは、この森を見るために、ここに来たといっても過言ではありません。親方に、開発状況を見た方がいいとのアドバイスがあったためです。そう、この貴重すぎるともいえる価値を有するこの自然林が、開発に巻き込まれようとしているのです。


 
下鴨神社は、道路をはさんで糺の森に隣接する土地約9600㎡を高級マンション用地として貸し出すことで、その資金を神社の整備に充てるそうです。現在の研修道場を壊した後道路を石畳風に改修し、マンション周辺にも樹木の植栽を行い景観との調和を図るとしています。(開発状況はバリケード内でよく見えませんでしたが・・)



厳密には指定された糺の森区域内ではありません。ですが、ここに鉄筋コンクリート造のマンションが建造されてしまえば、大規模な基礎工事による地下水脈への影響が出るのは明らかと思われます。その水脈が滞ってしまえば、道路一本で分け隔てられている糺の森が劣化することは間違いないのではないでしょうか。現在の研修道場や駐車場周辺にも、糺の森の主要樹木であるニレ科の高木は残っています。その樹木(50本ほど)を避けてマンションを計画する予定が、現行ではマンションに当たる部分の伐採か移植に変更されているそうです。どうかせめて移植されること、土中の環境を考えた道路改修がなされることを祈るのみですが・・

下鴨神社は式年遷宮の費用(屋根葺き替え他)に充てると言いますが、なんのための式年遷宮なのでしょうか。確かに精緻に葺かれた檜皮葺の格式は荘厳ですし、技術継承の場としても機能していると思います。その吹き替えのタイミングとして(諸説ありますが)檜皮の性質を考慮した20年が最適ということもうなずけます。神様に御不自由をかけまいという心は大変尊いとは思いますが、御祭神のみならず、八百万の神様は大掛かりな工事で悪化した環境を見るよりは、少し古くなった檜皮葺でもいいと思うのは私の無知ゆえなのでしょうか・・
下鴨神社も、宮づくりは森づくりから、という方針を持っています。それでしたらどうか、その稀有な価値を有す森に最大限配慮した宮のあり方を、願いたいと思います。

しかし、嬉しいこともありました。なんと偶然にも古本市がやっていたのです。数十はある古本屋の数、数。
全ての古本屋の造園系の本を探すこと二時間、いい書籍を買うことができました。





近代造園史に名を残す作庭家、故荒木芳邦氏が手掛けた勝尾寺の写真集です。荒木芳邦と言えば自然石を用いつつも水平の線を広く取ったカスケードのような滝が印象的ですが、本庭園にもそれが表れています。また前述した大北望氏も同様の滝を多く作られますが、シンポジウムにて戸田芳樹先生の作風への質問に対し「荒木芳邦さんに勝尾寺など様々な庭、滝を見せてもらったことが刺激的だった」と言っていので、嬉しいタイミングでこの書籍を購入できました。



下鴨神社も境内は素晴らしかったですし、夜行バスで着いたその日の夜に夜行バスで戻るというあまり心地はよくない旅でしたが、お目当てのもの+αが手に入り満足できました。

そのほかにも連休中にはボルダリングをしたりテニスをしたり、様々なお酒の席で友人と造園談義出来たりと、とても有意義に、造園的に過ごすことができました。テニスだけ関係ないように見えますが、テニスも漢字では「庭」球と書きますね。うすら寒いことを言って申し訳ありませんが、ルーツはやはり中庭でのアクティビティのひとつなのだとか。また先ほどの道具の話ではありませんがちょうながけの支柱を用いた四ツ目垣や土塀でおなじみの鶴川の庭師の方は昔、荒木田土でテニスコートを作る仕事などもされており、それも今の庭づくりに役に立っているといっていました。ニワを作るには、様々なこと、無駄に思えるような事でも吸収していこうと改めて思った連休です。


久々の更新で長くなってしまいましたが、ここまでお読みいただいた方有難うございます。その貴重な時間を頂戴しましたゆえに、上記の情報がなにかお役に立てるならと思う次第です・・


それにしても、最近はまた天気が不安定で豪雨が続いていますね。
最近つくばの現場に赴かせて頂いているのですが、常総の方では鬼怒川の氾濫がもたらした洪水被害が甚大のようです。一日も早い復旧をお祈りいたします。
しかし、川の氾濫や洪水など、天災と思われているようなことでも、人災でもあるんじゃないかと思う最近です。自然は科学で制圧できるのだと自然を畏敬する心を忘れ、自然の営みを無視した建設工事をしてしまったら、いずれ自然は牙をむくのではないでしょうか。今回の件でも、過去のソーラーパネル設置による自然堤防の掘削が問題視されているようです。その地に長く住んでいる近隣住民の方はその重要さに気づいていたそうですが・・。
さまざまなことを見直さねばならない時代が来ていると思います。


皆様もくれぐれも事故や体調にお気をつけてお過ごしください。





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2015年9月 9日 水曜日

合間時間

ブログをお楽しみの皆様お久しぶりです。
夏の暑さも収まり台風の季節がやってきしました。

夏の日照りが続いたお盆前には雨が降らず乾燥していた大地にも潤いが戻ってきました。

秋を前にドングリが膨らみ早くもキンモクセイの香が漂って来る所もあり、日々季節の小さな変化を楽しみながら仕事をさせて貰っています。


さて一方でこの季節僕たちにとってはなかなか予定の立てずらい季節でもあり、現場に出られない事もしばしば、晴れてたかと思うと突然の夕立に見舞われる等雨支度に追われる事もあります。

そんな天気の読めない時の現場はというと、そうです僕が入社して初めて行った現場でもある土気山です。

よくイベント等が有ると話す事があるのですが僕が入社した当初は背丈を超える程の一面のササ藪で見通しのきかない斜面地にあるササをコツコツ狩る所から始めました。

入社当初から携わっている所なので非常に思い入れのある所でもあります。

今では植物の季節の変化だけでは無く蝶々やトンボ等の昆虫類を目にする機会も増えた様な気がします。

さてそんな自然豊かな森になってきた土気山ですが何やらまた新たな動きが有ります。



ここは先に建てられた2棟とは反対側の位置にあり、しばらくポット置き場として手つかずだったヒノキ林の中です。

今回の小屋は松杭基礎を打ち込んでいて他の2棟とはまた違った魅力になりそうです。

今後またどんな建物になるのか楽しみです。

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