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2016年6月28日 火曜日

積み重ねる

高田造園スタッフブログをご覧の皆さん、梅雨敷きで天気も不安定の中、晴天時にはいよいよ暑さが夏を意識させる今日、いかがお過ごしでしょうか。社員の石井です。

私たち高田造園の最近はといいますと、出張が多く続いておりました。



こちらは先日竣工となりました、信州は上田の名所「鹿教湯温泉」、その温泉街に立地するお施主様のお庭です。現地の方の協力もあり、二週間足らずで完成となりました。
広大な敷地内にあった枝葉をしがらみとしたり石材を積み上げることで、台地状に造成された地形の法面に対して段を作って植栽スペースや園路を設けたお庭です。




そして、九州は長崎にも赴かせていただきました。写真は有明発のフェリーから見た景色となります。
現地で用意できない資材や道具、車両を運搬するため、車両ごとフェリーに乗り、九州は新門司港まで丸一日と半日かけて向います・・

造園工事としてはまだ樹木も一本も植わっていない状況ですので、写真は続報をお待ち下さいませ。



長崎出張からの帰りは、荷が軽くなったため高速道路での帰路となりましたが、その経由地として空いた時間運良く訪れ見学することができました京都の庭園についてご紹介したいと思います。



京都は嵯峨野、その美しさで有名な竹林を抜け、名園天龍寺を過ぎたあたりに、その庭園はあります。



「大河内山荘」です。
時代劇における当時の名俳優大河内傳次郎(1898-1962)が、百人一首で著名な小倉山の南面に、34歳であった昭和6年から64歳で逝去するまでの三十年の歳月をかけ、「消えることのない美」を求めてこつこつと創りあげた回遊式の借景庭園です。



最初に入館料(1000円)を入り口で支払い、サービスのお抹茶とお菓子をお抹茶席でいただいてから庭園を観賞することができます。
庭園の紹介と平面図が記載されたパンフレットには季節の写真が印刷された絵葉書が付属しており、拝観料を含めてもお得感のある料金体系となっています・・



順路の入り口でもある庭門



蹲もいい風情を出しています



門をくぐり、まず見えてくるのは、「大乗閣」です。
後に登場する建築物群の建てられた後、土地を買い足し構想10年、東の比叡山と西の嵐山との関係に着目した傳次郎が、数寄屋、書院、神殿、民家という日本の全住宅様式を網羅した建造物を数寄屋師・笛吹嘉一郎依頼し、戦争の悲しい時代を迎えつつも着工に踏み出し1941年に完成したものです。



それぞれの間の屋根の葺き方を変えることで様式の違いを表しつつもその様式を厳格に踏襲することはせず、それでいて一つの建物としてまとめ上げるところに、数寄屋師ならではの柔軟な姿勢が見える建築といえるでしょう。ちなみに茶室の間は国宝・如庵の忠実な写しとしています。嘉一郎が如庵の移築に関与していたからこそ可能だった建築といえますね。



大乗閣の濡縁からは嵐山と比叡山、そして古都の風光を感じることができます。
これを機に傳次郎は庭師・広瀬利兵衛とともに山荘の創作に明け暮れました。



視線を遮断、誘導されるかのような混垣や植栽に誘われてその先へ。



景色が広がりを見せたところに姿を現すのが、この敷地に最初に建てられた建造物、持仏堂です。傳次郎はこの小倉山の竹藪の奥に数百坪の土地を求め、関東大震災からの念願であった持仏堂を建てます。(1931年)
撮影の合間にここで念仏、瞑想し、静寂を得たことが、この山荘のすべての始まりだったのです。



その後また園路を歩きます。緩やかな斜面を登りながら絨毯のように美しい苔に導かれると・・



「滴水庵」です。
先述の持仏堂において仏と向き合う中で、(当時はフィルムの長期保存が難しく)映像が見た人に記憶にしか残らない映画芸術に「無常」を感じ始めた傳次郎は、当時親交のあった鹿王院の禅師・独檀和上より滴水禅師ゆかりの茶室を譲り受けます。(1932年)これがきっかけとなり、傳次郎は形に残る庭創りに芸術性を見出し、それにのめり込んでいきました。



精緻な軒内の作り込みが美しいです。



赤松と紅葉だけで作られたこの庭園は、後に建てられる大乗閣の習作となったようです。



そして、閉鎖的な園路を登り続けると・・



あらわれた四阿から、京都の街並みとそれを囲う山々、その盆地の様相が一望できるのです。
視線を隠し続けてのこの演出には、桂離宮に似たものを感じます。



下りの園路も景趣に富んでいて美しいです。



最後は大河内傳次郎の関連品が収められている記念館を拝見して、この庭園を後にしました。


私は一般的なイメージの「日本庭園」というものが高校時代から大好きで、京都の日本庭園も期を見つけては見学に赴いていたのですが、中でもこの大河内山荘と修学院離宮は非常に大好きです。

人それぞれ、庭園の好き嫌いの評価は分かれることと思いますが、私は「その庭園にどれだけ施主の命が入り込んでいるか」一つの評価基準にしています。
当時大スターだった傳次郎の出演に関する収入がほとんどこの庭園に詰め込まれている上、逝去するまで自ら庭づくりに携わり続けたその30年という積み重ねられた歳月が、その熱量を物語っていると思うのです。

お庭という空間は、そこに住まう、かかわるいのちに心を配るものでなくてはならないと思いたいのです。そのためには植木屋見習いたる者、施主の方が望んでいることは勿論、施主自身がわからないほどの、深層心理のような部分で望んでいたことすらも反映できるように精進しなくてはと改めて思い直した次第です。


それを思わせてくれた、この稀代の名園の施主であり作り手である大河内傳次郎の、自身の人柄を表すような、造園のみならずすべての「職」に通ずるといえる言葉でもって、今回のブログを終わらせていただきたいと思います。




「芸の上手いといふも下手といふも、ほんの僅かの差である。
その差は決して技巧の差ではない。
その人の人柄からくる無技巧の差である。」



有難うございました。

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2016年6月13日 月曜日

「不思議なクニの憲法」上映会のお知らせ

高田造園設計事務所スタッフブログをご覧いただいている皆様、いつもありがとうございます。社員の石井です。
今回は、7月3日の日曜日に当社所有の千葉市内ダーチャフィールドにて映画の上映会を行いますので告知させていただきたいと思います。

参院選を間近に控えたこの時期、憲法改正に対して様々な議論が行われていますが、そもそも私たちの暮らしの基盤ともいえる日本国憲法とはどのようなものなのでしょうか。
私たちは、どの程度この憲法の事を理解しているといえるのでしょうか。
今だからこそ、それを改めて学び、考えるいい機会なのではないかと思います。

会場の都合上人数に限りはございますが、多くの方のご来場をお待ちしております。



(クリックで拡大します)



<日時>
7月3日(日)

13:00 受付開始
13:30 上映
15:30 上映終了、休憩
15:40 茶話会
16:30 閉会(お時間に余裕のある方は終了後もごゆっくりお過ごしください。ご希望がございましたらダーチャフィールドの案内をいたします)
*お子様連れ大歓迎(託児はありません)

<参加費>
1000円 *今度が初選挙の人と18歳以下の方は無料になります。

<定員>
30名

<お申し込み・お問い合わせ>
株式会社高田造園設計事務所
TEL:043-228-577
FAX:043-309-7203
mail:info@takadazouen.com

<主催>
よりみちカフェ

<共催>
株式会社高田造園設計事務所、cafeどんぐりの木

<会場>
高田造園ダーチャフィールド内の山小屋にて行います
住所:千葉市緑区高津戸405-6フジガーデン資材置き場向かい

お車でお越しの方:東金有料道路中野ICを降りてすぐの「中野IC前」信号右折、「土気小学校前」信号右折、2km程先の高津戸の森看板を右折、突当を右折しすぐの突当を右折(駐車場ございます)
電車でお越しの方:JR外房線土気駅北口を出て「土気小学校前」信号左へ、1.5km程の緑ヶ丘団地看板を超えた一方通行看板を右へ(20分程。事前に連絡を頂ければ車での送迎をいたします) 





「不思議なクニの憲法」声をあげる私たち

監督 松井久子

~憲法には「私はどう生きるべきか」が書いてある。~


この映画は、憲法論議が政治によって進められるのではなく、主権者である私たち国民の間に広がることを願ってつくられたものです。
国のかたちをきめる憲法に、誰もが当たり前に関心を持ち、正しい知識を得、そして理解を深めるために、歴史的事実を重んじながら「意見」よりも日常に根ざした「人びとの声」に耳を傾けます。
怒りや憎しみから出発する議論は広がっていきません。対立よりも冷静な選択をー。
私たち一人ひとりが個として大切にされる自由な社会を守りたい。

映画にメッセージがあるとすれば、その一点の「希い」のみです。

(公式ホームページより http://fushigina.jp/





●●●よりみちカフェとは●●●

気軽に参加できる学び合いの場です。

目標に向かってまっしぐらもいいけれど、毎日の暮らしは忙しいけれど、

たまのよりみちは日々の暮らしに彩りを添えてくれるはず。

お茶を飲みながらのひととき、自分とはちがう感性・考え方に、

小さな驚きや発見がきっとあります。よろしかったらご一緒しませんか?

●●●よりみちカフェ スタッフ一同●●●



よろしくお願いいたします。

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2016年6月13日 月曜日

鎌倉アルプス

 ブログをお楽しみの皆さんこんにちは、いよいよ関東でも先週の日曜日に梅雨入りした様で、晴れ間は続きますがじめじめした天気が過ごしづらい季節になってしまいました。
しばらく出張続きだったのでいまいち実感はわきませんでしたが今日は久々に朝からまとまった雨が降っていて、梅雨入りしたのをようやく実感する事ができました。
この季節油断しがちなのですが以外にも熱中症になりやすい季節なので皆さんもこまめな水分補給、塩分補給等体調管理にはお気をつけください。

さてこの時期見ごろを迎えるのがアジサイ、最近花が咲いているのをよく見かける様になり街中等でも多く見かける機会もあるのですが、出張も落ち着きせっかくの休みだったので久々に鎌倉に訪れてみました。
鎌倉には以前正月明けのブログでも紹介させて貰いましたが仕事でも良く行くので、たまに落ち着いた時に立ち寄ってみたくなる場所になり、又も鎌倉の内容になってしまいました。

前回は鎌倉山の大仏ハイキングコースを散策したのですが今回は鎌倉アルプスと呼ばれている天園ハイキングコースというのに挑戦してみました。

天園ハイキングコースは北鎌倉から徒歩10分位の建長寺もしくは明月院からスタートするのですが流石にこの時期に明月院は人気が高く、入場行列ができていた為建長寺からスタートする事にしました。



建長寺は関東最大規模の法堂を誇る神奈川県指定重要文化財で講堂(お経を講義する所)にあたる建物が有ります。
仏法を講義する場の法堂には天井に水墨画の龍や法人等を描きそれが法の雨を降らすと考えられて、特にここで拝観できる水墨画の雲竜図は京都にある建仁寺の双龍図の作者小泉敦作画伯によるもので、5本爪の雲竜図を拝観する事ができます。
中国から伝わる過程で3本爪と決められていた日本では、5本爪が見られるのは建仁寺、天龍寺、建長寺と貴重な雲竜図をここ建長寺では拝観する事ができます。



さて建長寺を過ぎるといよいよ鎌倉アルプスの麓に到着です。
到着と同時にしばらく急な階段がつづきますが切り通しの湿った岩盤に岩たばこが自生していて紫色の花がちょうど満開で普段お目にかからない植物を楽しむ事ができました。
ちなみにタバコという名前が付いていますがタバコに葉っぱが似ているのが名前の由来でイワタバコは若葉を食用として利用する事ができ胃もたれ、食欲不振、消化促進等、腎機能が低下しやすいこの時期から夏にかけて有りがたい薬効を持った植物なのです。



しばらく続く階段を登りきると又も起伏のある尾根を登り降りする事になります。



ハイキングコースという事ですが中にはロープを敷設している所もあり中々のコースでしたが時々自生している植物や小動物の声等が森林浴をさらに楽しいものへと変えてくれました。


ヤマユリ


ホタルブクロ


ヤブニッケイ

等の植物等が梅雨のじめじめした季節でも森の中で静かに咲いています。

途中花等に目を奪われながらも中々険しい道を登り下りして約4キロの道のり



ようやく辿りついたのは今回の終着点、瑞泉寺庭園です。





 瑞泉寺庭園は禅の庭を創造した事で有名になった夢想国師の作庭によるものです。


夢想国師は自然を愛好し行く先々で庭園を作っており、瑞泉寺以外でも有名な庭園として天龍寺、西芳寺等が特に代表作で主に鎌倉末から室町時代初期に活躍した人物です。
夢想国師は大自然の景勝地で臨済宗の僧侶として修行し富士山の見える眺望の良い所や渓流、滝等の水の景座禅の場としての洞窟等、ここ鎌倉の瑞泉寺でもその特徴が表れています。



中は非公開の為写真はうまく取れませんでしたが池の西側には2つの橋を渡り18曲がりに園路をたどると山頂に到達するとそこでまた大きな庭と出会います。鶴岡から鎌倉周囲の山並みが重なり遠くには箱根の山がかすみ、右手に霊峰富士が大きく裾を広げる足元には相模湾が自然の池をなした大借景庭園なのです。
現在はこの橋を渡った頂上へはいけませんが、岩盤を彫刻的手法によって庭園となした岩庭とも呼べるこの庭園は書院庭園の先駆けあり、鎌倉に残る唯一の庭園なのです。
天園ハイキングコースでは、山の合間から富士山や相模湖鎌倉の街並みが眺望できるところがあります。




鎌倉に訪れた際は夢想国師の創造した世界を探しにきてみてはいかがでしょうか。














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