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2015年5月10日 日曜日

Garden Week

少し前までの夜の寒さが嘘のような、暖かいを通り越して暑いと感じられるような今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。高田造園設計事務所に入社して一か月が過ぎました、石井です。ご無沙汰しております。

前回の投稿からも一か月余り、あっという間の30日でした。日々、本当に、いい経験をさせて頂いています。
その現場経験を投稿するのも一つかと思いましたが、最近竣工しましたお客様のお庭や、弊社が行っておりますダーチャプロジェクトなどの詳細は高田親方が更新しています「雑木の庭づくり日記」にて紹介されていますので、今回は恥ずかしながらゴールデンウィークの連休中に自身が経験したことについて触れさせていただこうかと思います。

造園という分野に身を置いていると、どなたでも植物への関心は高まるものです。しかし、高田造園に入社し、親方や先輩社員の方を見ていると、自分がいかに植物の事を理解できていないか、即ち植物への愛が十分でないかということを日々痛感します。また親方や先輩の知識、知恵の深さ、広さにはそれぞれの方が乗り越えられてきた場数の凄味を感じさせられています。

折角の連休、自分の糧になる場所に行こうと思い、知人と高尾山、燈々庵に行ってきました。

ご存知の方も多いと思いますが少しばかりご紹介をさせていただきます。(燈々庵はまた下記にて)

高尾山は、東京都八王子市にある標高699mの山で、東日本西日本の植物が混在しているといわれるほど豊かな植生を有しています。その数およそ1300種。都市部付近に存在する割にはその植生が保たれており(その保護政策は遡れば中世からのようです)、登山道や交通機関も整備され気軽に訪れることができることから、一年を通して多くの人が訪れます。
自然を感じるという割にはメジャーで観光地化されている山を選択してしまいましたが、その植生の豊富さは上記の通りの上、この分野に身を置くものとして恥ずかしくも登山経験がほとんど無いことからきっかけとして高尾山にすることに。。
また、特にこの時期の高尾山は木々の新緑が美しく、世間の連休とも重なるため、大変な混雑が起こる様です。駅は通勤ラッシュのようにごった返し、高尾山の飲食店やロープウェイに二時間待ちの案内が出るなど、その様子は某テーマパークのよう。それでは豊富な植生を満喫できないと感じ、混雑が少ないといわれている早朝に高尾山を目指します。

早朝でも多くの人が高尾山口駅で下車していましたが、山道となると人もまばらに。
高尾山には1号路から6号路まである登山道の他隣接する山に登山することのできる道もありますが、今回は、ゴールデンウィーク中は下りが禁止される、沢沿いの6号路にて山頂を目指します。

沢の様子。(以後携帯での写真ですので綺麗に撮れていないものもあるかもしれません)


群生しているシャガ。


シャガ特有のお花。


蹲踞を思わせる水堀石


そして、高尾山頂です!


天気にも恵まれ、素晴らしい景色を望むことができました。
機材の調子かアップできない写真が多々ありましたが、他にもキンランや開きかけのフタリシズカ、ナルコユリやチゴユリ、ヤブレガサやホウチャクソウ等の山野草の他、キビタキなどの野鳥、雑木と呼ばれている木々の自生している姿が見ることができました。杉の大木の根っこがむき出しになって園路を形成している場所や、大木のモミジなど、見どころ満載でとってもよかったです!(分からない生物を教えてくれた友人に感謝です)
ブログをご覧の皆様にも、6号路はおすすめです!

この時点で朝八時。山頂にはもう既に沢山の人がいましたが混雑という程ではありません。
さわやかな天候とたくさんの自然に囲まれて有頂天だった私は、休日だからと言い訳して山頂の飲食店で知人と早速一杯お酒を嗜んでしまったのでした。。雑木林を目の前にして飲む早朝のビールは最高でした。。

そして一番整備された一号路を下って下山、一時間ほど電車を乗り継いで昼食をはさみ、念願の空間である燈々庵へ。

燈々庵は、東京都あきる野市にある懐石料理を提供するお店で、陶芸のギャラリーと喫茶室も併設しています。
江戸後期から続く豪農森田家の敷地内にある米蔵を再生し造られた店内には調度の良いインテリアとギャラリーが展開され、来客を非日常の世界へと案内します。経営者は黒茶屋代表取締役の高水謙二氏。古民家再生を切り口にした店舗づくりやプロデュースは圧巻です。会社名である黒茶屋は、高水氏が手掛けた一つ目の店舗で同あきる野市にあり、姉妹店にあたります。作庭は茶庭師としても名高い金綱造園事務所、金綱重治氏。高田親方の、親方にあたります。もう一つの姉妹店である井中居(東京都青梅市)の作庭も、金綱氏が行っており、雑誌「庭」でも特集されています(199号)。また高水氏も経営者として、214号に特集されています。本当に、どの店舗も素晴らしい空間がつくられています。

過去に高田造園のブログでも紹介されましたが、その時私はまだ入社していませんでした。入社してから改めてその空間づくりの巧みさを親方や先輩方から聞くにつれどうしても拝見したくなり、念願叶って訪れることができました。
生憎お昼の懐石は満席で、喫茶室も休みと、その素晴らしさを舌で楽しむことは叶いませんでしたが、お庭はたっぷりと拝見することができました。

ケヤキやモミジに囲まれた門。大通り沿いとは思えない景観がすでに展開されています。


何とも味わい深い看板。


アプローチのお庭を歩いて、門への見返りの景。雑木と下草、精緻な石畳がもたらす空気は圧巻の一言です。


アプローチを進んだ後に出現する庭門。


石積と穂垣。角のとれた石と上部の穂が開いた垣根に引っかかっている落ち葉が風情を演出しています。


ギャラリー入り口前。その名の通り燈々庵は「燈り」が一つのテーマとなっているそうで、昼間でも薄暗く感じる庭園構成が行われているようです。この時間でしか見れない日の光と燈の光の対比がまた心地よいです。


蹲踞と滝口。私ごときが解説など到底できない金綱大親方の作庭観が、随所に込められているようです。。


アプローチとはまた異なる雰囲気の、一階の食事席に面する庭。優美な洗い出しの園路の曲線と芝生、枕木が、落ち着いた足元の景色をつくっています。


陶器を用いている蹲踞。


建物を見返る。建物の美しさ、効果的な視点場、光と影の緩急に息をのみます。


さらに奥の流れ。大木沿いに流れる小ぶりので丸みのある石を用いた景色は、高田親方をして「金綱親方の最高傑作のひとつではないだろうか」とのことです。。「間」というものを考えさせられます。。


こちらは上記流れに接続する竹林沿いの流れ。こちらは護岸にあまり石を用いず草本類でまとめているからか、また違った趣です。竹とシダの作る景色は、客席から見てみたかったと思うほど効果的に足元を引き締めているように思います。


こちらもアップできない写真が多くあり、また食事中のお客様が映らないように配慮してのアングルとなったため、写真の未熟さをご了承ください。

大変に素晴らしい空間でした。。その一言に尽きます。
次回こそは、お料理を頂きたく思います。

その後は、他の友人も招集してお酒と共に造園談議をして過ごしました。
その時に毎回話題に上るのは、「自然と人」、「境界線」という言葉です。
どこまでが人間の行為なのか、人間のこの進歩も自然の営みとしてとらえるべきなのか、庭における作為と無作為とは、どこまでが家でどこまでがニワなのか、どこまでが自然に優しい時代だったのか、機械を用いるということはどういうことか、持続可能(sustainable)とはどこまでのサイクルで考えればよいのか、地産地消の地はどこまでを指すことができるのか(地域?地球?鮮度を落とさず冷凍保存された世界中の食材を用いる時代です)などなど、自然を用いる造園という分野を、昔より自然と切り離されている様に感じる現代にどのように活かすか考えるには避けて通れないと思います。

今回赴いた高尾山でも、最近建設された圏央道が問題になっているようですね。この工事によって高尾山の生物種が数百減ったとも言われているそうです。
しかし私はこの道路を、相模原の現場に赴く際に利用しました。無機質と言いながら、これによって生物種が激減したともいわれながら、その道路を仕事において利用しているわけです。

造園に用いる道具も、ブロワやトリマ、刈り払い等機械化、大量生産化が進んでいますね。電動の剪定鋏なんていうものもあるらしいです。一般的な剪定鋏や鋸などであっても、それは機械で大量生産されたもののほうが多いのではないでしょうか。
造園会社によって、出来るだけブロワは使わない、アルミの脚立は使わないなどの色があるように思います。私もできれば有機的な材料を用いた手作りの道具で心を込めた仕事をすることが最高と考えます。どのような庭師の方にお聞きしても、刈り払いとブロワだけで掃除することにはNoというと思います。しかし熊手や箒は外国の機械と材料で心無く大量生産した道具かもしれないわけです(もちろん心をこめて大量生産を行っている会社もあると思います)。今、プラスチックの「てみ」を使っていない造園会社はどれだけあるでしょうか。

時代性を捉えるのもいい庭師として身に着けたい能力であることは間違いありませんが、本質というものを理解し、曲げてはいけない部分を貫き通すのも、重要なことであると考えております。
ただでさえ未熟な私には、それを理解するには到底至りませんが。。一生を通じて追及すべきことであると思います。



とはいえ、念願の高尾山と燈々庵に訪れることができ、本当に充実したGW=Garden Weekを過ごすことができました!
連休に経験したことが単にリフレッシュや観光として消化されるのではなく、今後の仕事への糧として昇華できるよう、入社時の気持ちを忘れず、日々精進したいと思います。